第14話 如意棒の使い手 その2

「ここからが本番だよなぁ!?!?!?」


 フウシは「ふう」と一息吐き出しすと、目を髪を拭って砂を落とす。


「そりゃあ、もちろんよ!!」


 刀をしっかりと握り、力を込める。


 地面を足で踏みつける。


「ここからだ!!!」


 フウシは刀を自分の横に回し、空中から飛びかかる。


「隙だらけだな。」


 ラモラックはここぞと言わんばかりに、力を腕に溜める。


 だがフウシは、ラモラックの予想した動きとは違う、予想外の動きをすること

となった。


「何!?」


 フウシは空中で体ごと独楽のように回転し、剣で勢いよくラモラックの片手を

切り飛ばしたのだ。


 腕は塵となって、そこら中に散らばった。


「くそ!!!」


 腕を抱えたラモラックはフウシと少し距離をとる。


「どうやら、ようやく能力を使ったらしいな」


「あ、あれって…」


「あれはフウシ様のスキル…uzです。」


 俺が感嘆を上げて見ていると、マースさんが教えてくれる。


uz…?」


「はい。フウシ様は触った物や自分自身に回転を与えることのできるスキル。もち

ろん、液体や空気も例外ではありません。」


「名前にあった能力じゃんか…」


 ラモラックは抱えていた腕から、光のようなものが溢れ出ると、切られたはず

の腕が再び生えてくる。


「お前…何族だ?」


「教えるかよ、お前みたいな敵に」


 ラモラックは再生生えてきたした手を握ったり開いたりすると、その手か

ら再び長い棒を出した。


「確かに…ここからが本番なわけだな。それじゃあ、こちらも…」


 ラモラックは両手を広げる。


「本気と行こうか!!!!」


 ラモラックの背後に数多なる魔法で作られたであろう火の弾が現れる。


「くっ!!!」


 フウシはラモラックを中心として、あたりを回り始める。


 周りにあった屋台が次々と魔法によって破壊される。


「進行方向は塞がねえとなあああ!!!!!」


 ラモラックは魔法と並行して、フウシの進行方向から棒を振り回すが、それを

フウシはスライディングして一度避けた。


「なかなか良い反射速度だ!!!」


 フウシは刀をシッカリと握りしめると、一気にスピードを上げた。


「二撃目えええええええええええ!!!!!!!!」


 またもや目の前からくる棒を、今度はフウシは刀で受け止め、真っ二つに切っ

た。


「んな!?!?」


 そして、フウシは切った棒を片手で掴むと、ラモラックに向かってすぐに、投

げた。


「スキルuz!!!!」


 投げた棒は、激しく回転をして、ラモラックに当たり、一瞬、魔法が揺らぐ。


「隙あり!!!!」


 フウシはこの体制の崩れた一瞬を見逃さずに、ラモラックに刀を突きあげる。


「クソォ!!!!!」


 ラモラックはその瞬間、顔が歪み、まるで崖に立たされたような表情をする。


「これだけは使いたくなかったのに…!!!!!!!」


 その言葉を吐いた後、ラモラックは腰を抜かして、地面に倒れ、腰あたりに手

を当てた後、何か黒光するものを出した。


 その黒光するものは何か管のようなものを備えていて、管の先には、三角の突

起物が出ている。


「あれは…」


 俺がそう言おうとした瞬間。





 バンバンバンバン!!!!!





 爆発するような音が立て続けに4回も空高くに響いた。

「あれは!?」

「マースさん!!!!!早くあいつを!!!!!!!」

「え!?」

 俺は驚き、その場に留まっているマースさんを大声で、「早く!!!!!」と再び畳み掛け、ようやくマースさんは「あ?え?」と言いながらも、動き始める。

 あれは間違いない。








 銃声だ。







 気づくと、フウシの腹には四つの穴が空いていて、ラモラックはどこかに逃げていた。

「マースさん!!!!早く!!!フウシを病院に!!!!」

「え!?ど、どう言うことだ!?」

「いいから早く!!!」

 腹の中には弾丸が入っている可能性がある。

 下手に治療ヒールの魔術をかけても、後々心臓とかをぶち破るだけだ。

 銃を発砲して、当たりどころが悪ければ、三分で人は死ぬ。

 脳死するんだ。

「よ、よくわからんが、病院へ行けばいいんだな!?」

「ああ!!!!!早くしてくれ!!!!!」


 俺たちは急いで、魔王城の緊急病衣室へ行った。

 そして、ランプが薄暗く揺れる石造の病室の中で、フウシの手術が行われた。


 フウシは一命を取り留めたが、その後の3日間は起きることがなかった。



「こちらが、フウシ様の体内にあった鉄塊です。」

「ありがとうございます。」

 潰れた鉄塊。形は歪になっているが、間違いなくこれは弾丸だ。

 俺は石造の病室から少し離れ、魔王城の客室の中に入ると、鉄塊の一つを少し眺める。

 年式はわからないが、多分、先が丸くなっている。

 拳銃から発射されているか…


「もしかしたら、俺ら2人以外の転生者がいるかもしれない。」

 それも、アーサーという男が転生者な可能性こそ高い…

「アーサー。一体…どんな奴なのか…」

 謎に包まれたアーサーという人物の敵の思想や思惑。

 人物像すらわからないが、俺とフウシ。転生者の2人の存在を認知していて、そして、どこからか俺たちが転生者という情報も掴んでいる。

 神に拾われて、俺たちは転生した…という捉え方だが、それ以外の線もあるかもしれない。

 偶然。3人の転生者が同じ世界に転生する。

 そんなことあるのか?


「謎のままだな…アーサー…」

 円卓の騎士を統べる王の名を名乗るアーサー。

 そいつが未だに、なぜ俺らを狙っているのかはわからないが、敵であることには変わりなさそうだな…

「これは少し俺が思い描いていた異世界転生とは一味違いそうだ…」

 俺はそう呟きながら、魔王城から突き出た客室の中で、鉄塊を握りしめて言った。

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