第13話 如意棒の使い手 その1

「俺の名はラモラック!!フウシ!お前を殺す!」


 布の垂れた質素な出店が並ぶ広場で、ラモラックは不敵な笑みを浮かべながら


 近くには人影はないが、先ほどまではあった噴水が壊されている。


「俺が逃げたらどうする?」


「その時はここの国の住民を殺して回るさ。まあ、逃がさないけどな!!!」


 俺は前に出て「フウシ!」


「いや、ヒスイ。大丈夫だ。俺は魔王としての仕事を全うする。」


「りょーかい」


 フウシはそういうと、腰に掛かっていた剣を引き抜く。


 剣は片方の刃しかなく、恐らく刀であるだろう。


「んん?お前…ヒスイか?」


 ラモラックは何故か、目を凝らしながら俺を見つめた。


「え?ああ。そうだが…」


 ラモラックは何かを思い出したように「あー。ヒスイってやつも殺しておけな

んて言われたっけか?よっしゃ!!ちょうどいいぜ!!」


「お前は何が目的なんだ?」


 フウシは刀を構えてラモラックに問いかけた。


「さあな。それはアーサー様に言ってくれ。それより俺は早く殺しをしたいん

だ!!相手になってもらうぜ!!」


「なんて野蛮な奴!!」


 マースさんはラモラックを睨む。


「ま、俺は昔から野蛮なやつなんだ。そんじゃ、さっさと血飛沫を見ましょうか

ね。」


 と言うと、ラモラックは一瞬で、フウシの後ろに回り込む。


「はや…」


 と、言う暇もなく、フウシは一瞬で出店の方へと吹き飛ばされた。


「さあてと、次はヒスイ。お前だ!」


「まて、俺はまだダウンなんてしちゃいねえぞ」


 出店が並ぶ方向からその声がした。


「まだ死んでないか。」


「そりゃあ、俺は弱者じゃないんだ。」


「じゃあ強者か?面白そうだねぇ」


 ラモラックは両手に持っていた槍のような棒を体に纏わらせるように振り回す。


「行くぜ!お前は俺のスピードについて来れるかな?」


 ラモラックはまたもや消えると、すぐさまフウシの後ろで姿を現す。


「そこだ!!!!」


 フウシはラモラックの攻撃に気付いていたのか、後ろへと、高速で振り返り、

剣を振る。


「あぶな!!」


 ラモラックは手のひらから棒状のようなものを出し、剣の刃の進行を防ぐと剣

を跳ね返す。


 そしてすぐに追撃。


 フウシはそれをバックステップで避ける。


「お前の能力…まさか棒を出す能力か?」


「よくお分かりで。俺のスキル…それは如意棒。手のひらから棒を出すだけの能

力。」


「シンプルだな」


「ああ。実にシンプルさ。まあ、シンプルこそが一番強い。それはわかるだ

ろ?」


 確かに。


 俺のスキルも文字を書くだけだ。


 この世のことわりとして案外成り立っているのかもしれない。


「それに、俺の能力は、高速で棒を作り出すことによって、射出することもでき

るんだ。」


 ラモラックは、手のひらをフウシに掲げると、次の瞬間、強力な風とともに、

棒状の何かが、フウシの頬を掠る。


 フウシの頬からは血が溢れ出た。


「な!?」


「どうだ?見えたか?」


「くっ!!!」


 フウシは少し汗を垂らすと、足を踏み込み、一瞬でラモラックへと距離を詰め

る。


「無駄だな。」


 ラモラックは長い棒を手から離し、短い棒を手のひらから出すと、その棒をフ

ウシに連続で叩き込む。


「お前の剣よりも俺の棒の方が早い。それはわかるだろ?」


 フウシはダメージを受けつつも、後退した。
「仕方ねえ!!魔法で攻撃する

か!!!」


 フウシは刀を持っていない手の左手を掲げ、「小台風《リトルサイクロ

ン》!!!!」の掛け声を同時に斜め下に手を振り下ろす。


 そしてフウシの背後からは小さな台風が、ラモラックに向かって突撃をした。


「如意棒!!!」


 ラモラックは小さな台風を気にせずに手のひらをフウシに向かって掲げ、高速で

棒を飛ばす。


「やべ…!!!!」


 フウシはギリギリで横に体をずらしたが、気づいてなければ、心臓を撃ち抜い

ていた。それほどギリギリだった。


「油断は良くないぜ?」


 だが、俺たちが気付いたころにはラモラックはフウシのすぐ後ろへと一瞬で回

っていた。


 そして、フウシはあっという間にラモラックの持っていたドデカイ棒で払い飛

ばされた。


「ぐっふはああああ!!!!」


「フウシ様!!!」


「し、心配に足らないよ。大丈夫だ」


「ここからが本番だよなぁ?フウシイイイイイ!!!」



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