第11話 あいつは魔王様。
通させんと言わんばかりの石造の壁。
それは俺とブランチを影に入れるほど、大きい。
巨人も通させんようなこの壁は森と魔王城の城下町を区切っているいわば、境
界線だ。
「でけーなー」
そして、俺たちは魔王城に入るために、長い直線の道を歩いていた。ここはち
ゃんと石で整備されており、所々に手押し車を引いている人がいた。
俺たちはその壁を通るための検問所をちょうど通るところだ。
人は壁に開けられたトンネルの中にどんどんと吸い込まれていく。
そして、ようやく俺たちの番が回ってきた所までが、今までのちょっとしたプ
ロローグである。
鎧を着て、頭だけを出したおじさんの兵士が俺たちを一目見た。
「えーっと、職業と、名前。それと、ギルドに所属しているのなら、ギルドの名前と責任者の名前をこの紙に記入してください。あと、スキルの詳細も。」
そう言いながらおじさん兵士は黒い線の引かれた、紙を手渡す。
俺とブランチはそれを受け取ると、検問所に備えられていた木製の椅子に座り、紙を机の上に置いて、筆を取る。
「職業は冒険者で…名前はヒスイ…クラン名か…」
ギルド。
それは冒険者の集まりの名前で、俺とブランチは前に居たシャピン村のギルド
管理局で、ギルド登録してあるので、一応ここにはギルドの名前を書くとしよう
か。
「ギルドの名前って…」
ここで、ブランチが質問してくる。
「ギルドの名前は「ああああ」だぞ?まさか忘れたか?」
「そうだった。「ああああ」だったな。」
ギルドの名前は後から変更できるらしいので、その時は案がなく、仕方なく
「ああああ」にしたのだが、意外とこの名前は良いかもしれない(笑)
「スキルは黒板…っと!」
俺は全てを書き終わり、筆を置いた。
そういえば地味にブランチのスキルについて、聞いたことがないな…
ブランチの基本的な攻撃は魔法。
ブランチはブランチの父から魔法を習っていたらしく、魔法の才能があったと
かは、ブランチから先日に聞いたのだが…
俺は紙を取り、おじさん兵士に渡す。
「書き終わりました!」
「あ、はい。ありがとうございます。それでは、確認ですが…ってあれ?」
おじさん兵士は何かに気づくと、「少し待ってください」というと、トンネル
に埋め込まれている木製の扉の中に入っていった。
「どうしたんだ?」
先に書き終わっていたブランチが話しかけてきた。
「なんか、紙渡したら持っていったんだよね。どしたんだろ?」
「俺の黒板のスキルにでもビビったかな?」
そしてしばらくすると、木製の扉が再び開いた。
「失礼しましたヒスイ様。それでは、魔王城へとご案内します。」
そう言いながらおじさん兵士は膝を地面に突いて胸の手を乗せた。
「なんか、確認とかしなくても大丈夫なんですか?」
「魔王様からヒスイという名前のつく奴は直ちに魔王城へと来させろと言われて
おりまして、10年間もヒスイという名前の者はすぐに通せと言われておりまし
た。」
「それ…人違いなのでは…?」
「いえ。この世界で私はヒスイという不思議な名前は私は聞いたことがありませ
んけど」
「えぇ…」
俺はブランチと一緒にマースと言う名前のおじさん兵士に街中を通って案内さ
れていた。
街は大きな通りを中心として、色々な店が出回っており、目に止まるところか
ら
服屋、武器屋、八百屋、和菓子屋など、色々な店が出回っていた。
「なんか、変な店、いっぱいあるんだな」
「ここの店は評判が良くてね。なんでも、魔王様が考案したんだとか。」
なんとなく、魔王様が誰か…少しずつだが、わかってきたかもしれない…
「にしても、色々な種族がいますね。」
「ここは色々な所から技術者を取り入れているんです。この国には、今、少なくと
も、30種以上の種族はいるらしいですよ。」
「そ、そんなに!?」
「はい。そんなにいるらしいですよ。ちなみに私は魔神族ですよ。」
どうりで、人間みたいな見た目をしているわけだ。
見た目的には魔神族が一番人間に近いんだよな。
まあ、魔神族の特徴は魔力の量が多く、身体能力も高いため、種族の強さラン
キングで言ったら、2位に入るらしい。
「そうなのか。最近種族の数が増えてるって聞いてるから、あんまりわからない
んだよ。」
「そうなんですね。あ、それより着きましたよ。ここが、魔王城です。」
マースさんは一度立ち止まった。さっきからなんとなく存在自体は気付いた
が、改めてみるとやはり大きい。
石の煉瓦をつみ、西洋風のお城には、緑色の旗が掲げられている。
魔王城はディズニーで見たラプンツェルの城なんかとは比べ物にならないくら
い大きく、大きな怪獣のように威圧感のようなものを出しているような気さえす
るが…多分気のせいだろうなぁ…
マースさんは扉を叩き、開くと、城の中へと俺たちを案内する。
そして、目の前に現れたのは、一面に緑色が広がった景色。
「どんだけ緑が好きなんだよ…」
ブランチの言葉には実に同感だ。なんでここまで緑色に揃えるのか…
俺は階段を何回か登り、その後、いくつかの廊下を通った。
そして、俺の目の前には、2枚の金属製の扉が現れる。その扉の中央には、緑色
の丸い宝石のようなものが埋め込まれており、その宝石は少しばかり、白く濁っ
ている。
「さあ、この階段を登りましょう。そしたら、魔王様には、すぐに会えます。」
俺は一息つく。
少し笑って…
まあ、少しどころではないだろうけどね。
「開けてください。」
俺がそう言うと、少しずつ、扉が開いた。
「待ちくたびれたよぉ…ヒスイ。」
2枚の扉の間からは、少しずつ、見知らぬ、ヤギの角の生えた白い種族が見えて
くる。
顔は知らない人では、あるが、態度が全てを語っている。
「はは。そんなリムルみてえにして構えてる奴が、俺の親友だとはねえ…」
完全に開いた扉の先には、王座の手を置く部分に足を乗せ、緑色と、黒のマン
トを羽織り、首からは扉に埋め込まれていた、翡翠をぶら下げている。
「よお。久しぶりだな。フウシ。」
「久しぶり、ヒスイ。」
フウシは王座から、立った。
俺はフウシに近づいて、お互いにハイタッチをした。
ハイタッチは実に懐かしい感覚を思い出させる。
やっぱり、親友ってのは良いな。
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