第10話 平和な村 その2

「走ってベットにィィィィダーイブ!!!!!」


 ブランチはフカフカとした素朴なベットの中に今から水泳をするかのように飛

び込み、ベットに敷き詰められた綿毛に衝撃を受け止められる。


「はは、そんなこともしたなー」


 俺は前世の修学旅行のことを思い出す。


 俺がこの世界に来てから大体1ヶ月。最近、楓史と全然喋ってないな。


 神様の言うには、この世界に楓史も一緒に転生したと聞いているが、実際はど

うなんだろう…もしかしたら、1000年前とかに転生して、今頃もう死んでいるか

もしれない…


 そう考えると、俺の胸の奥が締め付けられるように痛む。


「どうしたヒスイ?暗い顔なんかして」


 俺は微かに笑って、「なんでもない」と言った。


「そろそろ寝よう。もう10時だし。」



「そうだな。」


 俺はベットの中に入ると、窓辺で静かに輝く赤い花を眺めながら眠りについ

た。


「はあ〜。おはよ〜ナンダよ〜」


 俺らはロビーであくびをしながらカウンターに寄りかかっているパジャマ姿の

ヘンリーに朝の挨拶をすると、カウンターに部屋の鍵を置く。


「これ。ありがとね」


「いいンダよ〜」


 俺はお礼の言葉をいうと、木製の扉を開けて宿屋から出て行った。




「ヘンリーの話によると、この先に魔王城があるらしいぞ。」


「な、なるほどね…」


 俺は魔王城という単語に少し心構える。


 真っ直ぐな森の道の中。


 少しばかりか整備はされているが、やはり凸凹している。


「魔王城って…やばいよな…?」


「え?魔王城は…まあ、確かにやばい時もあるな。まあ、代によるよ。」


「代?」


「おう。魔王様の1代目はやばかったらしいけど、最近は落ち着いているみたいな

ことを聞いたことがあるんだよね。」


「そ、そうなのか」


 よかった…


 どうやら、ブランチの話によると1代目の魔王はこの世界を手中に収めようとし

たらしいが、その魔王を「勇者」と名乗る存在が倒したという。


 まあ、それも1万年も前の話らしく、最近では本当に勇者は実在したのかも怪し

いらしい。


「とりあえず、この世界は今は平和だよ。」


「そ、そうか。」


 俺は安心と少しばかりの喪失感を味わう。


 魔王と戦って勇者になるみたいな話があってもよかったと思っていたのだが…




「お!?あれじゃないか!?」


 シャピン村から出発して、数日が経ったある時、俺らの前に少しずつ石造の何

かが姿を表し始めた。


「あ、あれって…」


「魔王城じゃないか?」


 ブランチは少しばかりガッツポーズをした。


「ようやくベットで寝れるぜ!!!」


「ああ!ここ数日間ずっと野宿だったからな…」


「よし!!行こうぜ!ヒスイ!!」


 俺たちは一気に自分の足をフルパワーで動かした



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