第9話 平和な村 その1
「え!?どこ!?」
「だから…ここはシャピン村です…何回も言わせないでください!」
そういうと、村人は俺らに飽きたのか、長いうさぎのような耳を震わせて胸を揺
らしながら去っていった。
「すげえな。ブランチ。胸大きいからってあんな気軽に話しかけれんだ…」
「まあ、ナンパ成功率いまだに0%なんだけどね」
田畑の目立つ村。
獣人の色が目立つこの村はどうやらシャピン村という村らしい。
俺らが居た、「王国センピゼント」はこの世界でわかる範囲の中で、一番大き
な王国というらしいが、この世界はセンピゼントの領土の10000倍はあるというら
しい。
まあ、全ての地域を巡った人も、この世には存在しないらしいので、独自の文
化が生まれているところもどうやらあるらしい。
「とりあえず、今日はここがどこなのか調べることと、金稼ぎかな〜。あと、宿探
し」
「そうだねえ〜」
「それじゃあ、俺は宿探してくるわ。ブランチは適当に、ここがどこなのかと
か、ギルド管理局とか探しておいて〜」
「りょーかい。ヤッホー!!!お姉さん探せるぜ〜〜!!!」
そう言いながらブランチは勢いよく村の北側に向かって走り出した。
やっぱゴブリンって性欲強いんかな?
「すいません…ここら辺に宿屋ってあります?」
俺は道ゆく人に聞き、宿屋を探していた。
「この村にかい?んーあんまり聞いたことないねえー」
「そうですか…ありがとうございました!」
俺はその言葉を言って、獣人の老人に別れを告げる。
「んーなかなか、ないなー」
そもそも、360度田畑しかないからこんなところに宿屋はあるんだろうか…
ぶっちゃけ、俺の前世にいた糸魚川には全く宿屋なんてなかったしなー
あ、それは俺がド田舎にいたらか。
そもそも、農道の真ん中に来る人なんて、ジジババしかいないしな。
「ちょっと村の真ん中とかに行ってみるか。」
俺は村の真ん中に立っている噴水に向かう。
噴水は日光を反射して、あたりに涼しい雰囲気を散らしている。
「とりあえず、誰かに尋ねてみるかー」
俺は道ゆく人…まあ、そんなに人通りも多くないんだけど…
とりあえず、一般人Aっぽそうな人に話しかけてみる。
「あのーすいません。ここら辺に宿屋ってありますか?」
「あー宿屋?もしかして冒険者的な人?」
「あ、はい!そうです!!」
その人はポンと手を叩くと、噴水の横にある大きな看板を掲げた家を指さす。
「それなら、あそこが良いんじゃない?」
「あそこ?」
「宿屋ヘンリー」
「おお!良いですね!!そこにします!!ありがとうございました!!」
俺は感謝を伝えると、ダッシュで、その宿屋に向かった。
「良いってもんよー!」
宿屋ヘンリーと書かれた看板の下にある扉を開けて、その宿屋の中に入る。
「すいませ〜ん」
宿屋の中は、木製でできていて、少しくらい雰囲気だったが、日光も、カウン
ターに差し込んでいる。
そして、カウンターの隣には、小さな通ろが二つ存在していて、一つは泊まるこ
とのできる部屋に続いている廊下だろうか…
「ホイホイホイ!!こんにちわナンダよー?」
そして、もう一つの通ろからは、小さなピンク髪の女の子が出てきた。
小さな女の子は、ハッチ帽を被り、ブカブカの服を着ている。
ハッチ帽からは、獣人と思わしき、耳が生えていて、ズボンとの間には、毛む
くじゃらの尻尾を出している。
「え、えっと…店主を呼んでくれるかな…?」
そのことを俺が、しゃがんで言うと、女の子は頬を膨らませて、言う。
「し、失礼な!!!私が店主のヘンリーナンダよ!!!」
「え?」
「ヘンリー・ダンソー!宿屋ヘンリーの店主ナンダよ!」
ヘンリーと名乗った女の子は自分の胸を叩くと、大きく股を開いて立った。
「な、なるほど…」
「何か文句があるンダよ?」
「え、いやー…なんでもないです!」
ヘンリーはカウンターに戻り、元から用意されていた台に乗り、カウンターに
手が届くようにした後、メガネをかける。
「それで?お客さんはなんのようナンダよ?」
俺は、本来の目的を思い出した。
「あ、そうだ!今日って宿屋空いてますか?」
「今日は空いてるンダよ?」
「それじゃあ、2人分の部屋を用意してもらっても良いですか?」
ヘンリーは薄い本を開き、目の前にあったペンを一瞬でとり、3回ほど、目の前
で回してみせたあと、キメ顔をした。
「良いンダよ!!!」
「ありがと」
俺はそういうと、ヘンリーはまたもや、ぷくーっと頬を膨らませて、「子供扱い
しないでほしンダよ!!」と言った。
とりあえず、宿屋は確保と。
「そうだ!世界地図とかここに置いてますか?」
「世界地図ナンダよ?えーっと…ちょっと待ってルンダよ!」
そう言い残して、ヘンリーは二つある通路のうちの、出てきた方の通路に戻っ
ていった。
しばらくして、よちよちと歩きながら、自分の身長よりも大きい紙を持ってく
るヘンリーはその、紙をカウンターにめいいっぱいに広げた。少し、傷んでいる
この紙はどうやら、世界地図のようだ。
地図の中央には、小さくだが「センピゼント」の文字が刻まれている。
「これは昔の旅人さんが置いていった奴ナンダよ!そんで、ここに書いてあるの
が、中央王国、センピゼント!」
ヘンリーは俺が見ていた、センピゼントを指さす。
「そんでもって、ここら辺が、シャピン村!」
ヘンリーはそこから、50センチは動かして、大きな半島のような地形のところ
の端を指さした。
「え?これって、センピゼントに行くには、どれくらい時間かかりますかね?」
「え?多分、歩いて行ったら100年くらいナンダよ?」
終わった…
「でも、ここ!バル王国!バル王国には、転移魔導師がいるだろうから、ここに
行けば、一瞬で、移動できるンダよ!」
転移魔導師?そういえば、試験の時も、魔術で移動していたような…?
「とりあえず、バル王国に行けば、一瞬で、センピゼントに行けるンダよ!!」
「それじゃあ、センピゼントに行くには…?」
「うーん…多分、5年はかかるンダよ?」
まじか…
「あ、でも!!」
「でも?」
「でも、魔王様ならなんとかできるンダよ?」
「ま、魔王様?」
ヘンリーは首を縦に振ると話を続ける。
「魔王様の所なら、転移魔導師の1人くらいならいるかもナンダよ!!」
「まじか!!!今度、そこ行ってみますわ!」
「で、でも気をつけルンダよ?魔王様…怒ると怖いンダよ…」
俺は少しニヤッと笑って
「大丈夫ですよ…僕は子供じゃないんで…」
すると、ヘンリーはぷくっと頬を膨らます
「だから!!私は子供じゃないンダよ!!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます