第8話 バトルフェイズ その2
ポケットから時計を出す…あれから何分が経っただろうか…
「5分こいつの前に立ってるとか…無理だろ」
俺は弱りながらも、剣を両手で握り直す。
「かかってこいよ!!!やってやる。やってやるよ!!!」
「その息だ。ホワイトドラゴン。殲滅しろ。」
銀色の竜は空へと音の咆哮を放ち、俺の方向へと翼を広げた。
俺は手に魔力を込めて、全力で戦闘体制になる。
俺は先手を打つべく、全力で足を回し、銀色の竜の周りをぐるぐると回る。
それに反応した銀色の竜は俺を頭で追いかける。どうやらまだ、様子見の域を超えてないようだ。
先手必勝。俺は急に回るのをやめて、銀色の竜の懐へと、飛び込む。俺は懐へ飛び込むと、すぐに、剣を上に向かって上昇させて、銀色の竜のお腹を切ろうとするが、剣の斬撃は、硬い銀色の鎧のような鱗によって、防がれる。鱗は、全く傷つきもせずに、銀色に輝いていた。
「か、硬え!!!!」
と俺が言う頃には、俺は後ろの方向へと、銀色の竜の前足で吹っ飛ばされていた。
「ッチ!!!」
俺は後ろの方に立っていた木を2本くらい折って、反動が止まる。
「ぐ、ぐっは!!!!!」
俺は自分の中から血液を吐き出すと、両手を使って再び立ち上がる。
「止めをさせ!!!ホワイトドラゴン!!!!」
モルドレットがその言葉を放つと、銀色の竜は、四つ這いになって倒れている俺に向かって、大きな口を開ける。
その大きな口からは何か太陽のような熱を少しだけ感じる。まずい。
顔を上げると、銀色の竜は口の中から赤い光を放出していた。
ここで終わり…なのか?
俺は死という言葉が、頭の中に浮かんだ。
「ホワイトドラゴン。焼き払え。」
クッソ!!!ここまでなのか!?!?
と、ここで、あることに気づく。
「フッ!」
俺は口を片方だけ角度をつけると、地面に這いつくばった。
「死んだのか?まあ良い。念のためだ。」
俺は手を地面に置き「岩石の柱!!!」と唱えた。そして、その言葉を言った途端、俺は地面から岩が空に向かって勢いよく伸びていき、文字通り、空に投げ出された。
風を切る感覚、息もできないくらいに上から風が降ってきた。
そして、上へ投げ出される力が弱まっていくと同時に、俺は全力で、腹から声を出す。
「ヒスイ!!!!出番だぞおおおおお!!!!!」
「ああ!!!!!」
遠くの方でヒスイの声がした。
***
「
俺の横に六つ並ぶ、小さな魔術陣。
そこからいくつもの火の玉がマシンガンの如く、六つ全てから、モルドレットに向かって、飛んでいく。
火の玉の連続攻撃は止まらない。
火の玉は銀色に輝くホワイトドラゴンの鱗を貫き、ついにはモルドレットへと届き、爆風が辺りを覆う。
ババババババババババババババババ!!!!!!!!!!
激しい轟音で、発射される魔術の火弾はヒートアップする!
ガトリングというのは伊達じゃない。
俺のスキル、「黒板」基本は空中に魔力の線を描くだけ。それだけの能力だ。だが、魔術は魔術陣に含まれている総合魔力量によって決まる。紙に魔力が1含まれているとして、鉛筆に1魔力が宿っているとする。その二つを使って紙に魔術陣を描くと、総合魔力量2の魔術が使える。俺はそこに目をつけ、俺のスキル、黒板で、魔力量5000000000の線を使って、空中に魔力陣を描く。そうすることによって、強い魔術が描ける。
「はあ、はあ、はあ」
だが、これは体内の魔力を大量消費するので、今はまだ最後の切り札的な存在だし、線を描くのに、まあまあな集中力が必要なので、六つの高度な魔術陣を描くとなると、5分の時間を要することになってしまう。
まだまだ研鑽の必要な能力だ。
地中に漂う土埃が結果を隠すように当たりを包む。
だが、結果はすぐに知ることになった。
「全く…派手な攻撃じゃないか」
「んな!!!!」
ホワイトドラゴンこそ、穴だらけで、重症。動けないくらいまでの怪我を負っていた。だが、肝心のモルドレットは怪我どころか、燃えカス、それにかすり傷一つとして無い。
「ど、どういうこと!?!?」
「まあ、当たらなかったってことだよ。残念だったな」
俺は前に手を出し突き出す。
「スキル!!黒板!!」
魔力を一つ一つの線に籠めて俺は魔術陣を空中に描くが、途中で線が描けなくなる。
「な、なんで!?」
「魔力が無くなったんだろ。まあ、この世界の生物は魔力量を見ることができないんだけど」
「そ、そんな!!!」
俺は汗を垂らす。
「ば、万事休すか…」
モルドレットはシルバードラゴンの倒れているところを見る。
「まあ、こちとら視察もできたわけだし、俺は逃げさせてもらうよ。」
「は?」
モルドレットはその事を言うと、片手の本を開いてホワイトドラゴンを光の塵にする。
「とりあえず、今度は俺以外の敵がヒスイを狙ってくるから覚悟しといてねー」
モルドレットは片手に持っていた本から光を出してどこからともなく見たことあるようなピンク色の扉を出現させた。
「じゃ、アデュー」
「おい!!ちょ待てよ!!!」
と、その言葉が聞こえることもなく、ピンク色の扉は地面の接着面から光の塵となって消えて行った。
「ウソダドンドコドーン‼︎‼︎!」
と言いながら俺は膝を突いて倒れた。
森の奥の方からガサガサと何かが通る音が聞こえた。
「こ、今度はまさか…新手のスタンド使い…」
「ふ、ふう…終わったか…?」
出てきたのは新手のスタンド使いではなく、ただのブランチだったようだ。
「な、なんだお前か。」
「とりあえずは終わったようだな。」
と、ここで俺は気づく。
「あれ?そういえばさ、これって戻れなくね?」
「あ。」
どうやら、ここから戻るのには、ちょっとした冒険の後になりそうだ。
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