第3話

「フッ……」

 

 もう、未練はないぜ。

 

 おばさんが、リンゴを包装している合間に、商店街の東側から数十名の騎馬隊がやってきた。騎馬隊は、その機動力から魔王戦争で活躍していた王国の大事な部隊だ。


 妙だな。あっちの方には、王城しかないはずだ……?


 魔王戦争。

 

 一週間前には勃発していた魔王軍と人類軍との30年も続いていた大戦争だ。


 勇者の俺がいるから、あっけなく魔王戦争では人類側が勝ったのはいい。

 けど、その後は俺は職を失い。

 今じゃ、一文無しだ。


「ま……また、魔王が蘇っていたりして……」 

 

 俺の不吉な予想通りに騎馬隊が、俺の方へ近づいてきた。騎馬隊の先頭には、顔見知りがいた。


「勇者ランダル。国王様がお呼びだ。すぐに王城へ行け……うん?」

「悪い……魔王なら今は間に合ってる……戦争はちっとも金にならないんだよ」

「……何を言っているんだ……そうはいかんぞ。いや、だが。今度は魔王討伐ではなく。魔王城自体に用があるんだ。国王様から魔王城の最奥を配信せよとの命を受けている」

「ふ? へ? 配信?」

「……ふー、そのようだな……」


 俺と共に魔王戦争で戦った仲間の一人だった。

 それも、大戦争でも生き延びた。

 数少ない生き残りの一人。


 女騎士団長のスザンヌが呆れて言った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る