第2話 リストラ? いえ、金のために勇者辞めたんです!

 ここはニューライズ王国。


 帝都から少し離れた小国を治める元は軍事国家だった。だが、突如、帝都の方角から出現した魔王城によって、否応なく戦火に巻き込まれ、今では魔王こそいないが、ポンコツとなった国。


 時の王。ライズ国王によって、戦争状態だった周辺の国とは急遽、和平や同盟、休戦などが執り行われていた。


 この国には、転生した勇者が一人いた。


 名前は、ランダル。


 まつりごとに疲弊してきたライズ国王は、その魔王も倒した勇者を再びコキ使い。王国広報部と協力し、このポンコツとかした国を復興させようと考えるようになった。


「そうか。配信があったぞ! 魔王の恐怖はまだ人々の心に大きな爪痕となって、根強く残っておる。そこでだ。余は勇者に非常に危険な魔王城へと再び旅立たせ。安全だということを、全国へ配信させるのだ!」


――――


 チュンチョンと雀が鳴く商店街で、俺は果物屋を覗いていた。


 昔、俺はこの世界へ転生というのをしたようだ。合意なしで魔王討伐へと旅立って、その時の仲間はとうに各々の故郷へ帰って行ったし……正直、やることがない。朝日が綺麗だなあ。噴水の傍で寝ていた俺は、よく風邪を引かなかったよ。俺の過去ってなんなんだろう? 気づいたら戦場のど真ん中だったし。


 うん。今日も良い気温だ。

 

「あ、おばさん。このリンゴ幾ら?」

「ああ、それは100リンさね」

「安いな……買った。フッ、これが、今日の朝飯さ」

「毎度あり。あんたも苦労するねえ……」


 魔王戦争中。どんどん経済状態の悪化した王国から戦争資金しか貰っていないんで、ラスボスを倒した俺の財布は、どんどん薄くなるばかりだった。

 

 

 三日も経てば、布切れとなってどこかへ飛んでいってしまう運命の俺の財布。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る