第4話

「あ! あそこにあるのは?! ニューライズ産限定100年ものの特級ワインだ!! しかもなんと100リンだって!?」

「な、なんだと?!」


 スザンヌの表情がスッと変わった。

 どんな小さなものでも、射ぬいてしまうかのような。そんな目で、俺の指差した方向を向いた。


 俺はその隙に……。


 逃げた!!


 人々の合間を縫うように猛ダッシュ!!


「団長!」

「ランダルが逃げます!」

「おのれー! 何故! 団長が毎夜、うわごとのように「死ぬときは100年ものの特級ワインと一緒だー! 必ず手に入れてみせるぞー!!」という。寝言を知っているのだ!」


 騎馬隊たちがやっきになって、俺を追いかけてきた。

 だが、俺はそれでも一目散に金にならない仕事から、逃げて行くぜ!! 

 

 西だー!

 西へー! 西へー!


 こうなりゃ、走り通してやる!


 その時、ヒュンと俺の頬を矢がかすった。


「い、痛い!」

「ランダル! よくもこの私を騙したなーー! 100万リンもする100年ものの特級ワインお前が買ってしまえーー!!」

「危っぶねーーー!! 買えるかバカー!」


 スザンヌが怒り心頭で、弓を射ってくる。

 俺はヒリヒリする頬をこすりながら逃げていると、スザンヌという人物のもう一つの特徴を思い出した。


 騎馬隊なので、当然。弓の名手だ。

 それも団長だから、女の中で一番強い。どころか、その腕は王国一なんだ。

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