太郎サイド

「私、太郎君が好きです」


 学年一の美人の華子さんに、体育館裏に呼び出された。

 こんなところに呼び出すって言うから、多分そんなことだろうと思っていた。

 先週も、先々週も立て続けに言い寄ってくる奴がいるんだよな。

 俺もモテ過ぎちゃって困っちゃうな。


「太郎君って、彼女さんいないって聞いたし。私じゃダメかな?」

「いや、ダメってことは無いけれども……」


 なおも、華子さんは食い下がってくる。


「私、こんな気持ち初めてで。どうか、私と付き合って下さい」


 華子さんは、頭を下げて、手を差し出してくる。

 俺が魅力的ってことなんだろうな。


 女の子を比べるのも良く無いって思うけど、月子よりも、華子さんの方が、顔もいいって思っちゃうし。

 俺って、どうしても、優しさが出ちゃうんだよな。


「どうしてもって言うならさ、俺の言うこと聞いてくれたらいいよ」

「え、本当に?」


 嬉しそうな顔っていいよな。

 俺まで、嬉しくなっちゃうよ。


「俺と付き合うっていう事は、誰にも言わないって約束できるなら、いいよ」

「えっ? ‌大丈夫だけれども、なんで?」


「俺が、誰か一人と付き合うってなると、付き合ってる子がいじめの標的にされるかもしれないだろ?」

「確かに、そうかもしれない」


「だから、付き合ってる子を守るってことも考えてさ。もし、それでも、良ければ」

「もちろんです。太郎君ってどこまでも優しいですね」



 ……はぁ。

 ……これで、八人目の彼女か。


 一日一人ずつデートしても、一週間ローテーション、間に合わなくなってきたな。

 モテるって言うのも辛いよな。


 それでも、誰も悲しませないで、付き合ってるからな。

 俺ってば、良い奴だよな。




 これが、俺の秘密。

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