第3話 弁解

「何やってるんですか...?」

頭から血が下がるのがわかる。もちろん下にも血液が巡らない。

「いや、えっと、その」

ひとまず落ち着いて右手をズボンから抜いた。

「ほら、その、借りたものを返してたというか、、、」

「ふふふ先輩誤魔化すの下手なんですね。」

不敵な笑みを浮かべる春田沙織。僕は手が震えていた。もちろんジャージは持ったままだ。

「最初から見てましたよ?そんなにロッカーを開け閉する大きな音がしてたら、遠くからでも聞こえましたよ。」

ニヒル笑いの表情は僕の思考の邪魔をした。

「1年生の教室は棟も違う。そこまで聞こえるはずがない。」

「たまたま近くを通っただけですよ。話を逸らさないでください。今、先輩は誰かのジャージを持っていて、さっきズボンに手を入れてましたね。しかもそんなところに。一体、何しようとしてたんですか?」

「待て、降参だ。要件を聞かせてくれ。」

「もうですか?もっと先輩の焦ってるとこ、見たかったんだけどなあ。まあいいですよ。」

沙織はゆっくりと口を開いた。まるで、獲物を捕らえる前の猫のようだ。

「ふふっ別に脅したりなんかしませんよ。でも、ただ口外しないってのもおもしろくないですよね。」

こっちはそんな余裕ないんだが。

「んーそうだな。さっきやろうとしてたことの続きをしてください。そうしたらきっと明日には大問題ですね。先輩が明日どう切り抜けるか見てみたいです。一応、アリバイ工作は私も手伝いますが、1番怪しいのはもちろん先輩です。」

なんとか助かったか。いやそんなことない。この状況から助かるわけがない。

まずいが従うしかない。

時計の針は15時30分を指している。

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