第3話「救世主(天使)現る!」



「彼は何もしていません!」


そんな俺を助けてくれる天使がもう一人いた!


金髪の女の子が、俺の冤罪を晴らすべく声を上げてくれたのだ!


よく見れば、先ほど「卒業パーティを卒業パーティで婚約破棄を叫ぶ奴から守る会」のメンバーを連れてきた少年が金髪の少女の隣にいた。


この二人はパートナーなのかな?


なにはともあれ、助けてくれてありがとう!


「その話は本当か?」


強面のOB先輩が少女に尋ねる。


「ええ、私はずっと見てました。

 ルイス先輩は婚約破棄を迫られても、婚約者に冤罪をかけられても、一言も弁明しませんでした」

 

金髪の少女の背中に天使の羽が生えているのが見えた!


ありがとう! 名も知らないブロンドの少女!


俺の冤罪を晴らしてくれて、ありがとう!


それから俺の無実を信じてくれてありがとう!!


「彼女の言っていることは本当か?」


強面のOB先輩が俺に尋ねてきた。


先輩、眼力弱めてください!


目があっただけで失神しそうになるほど怖いです。


俺は先輩の問いかけに、無言でコクコクと頷いた。


「証人もいることだし、お前の無罪を信じてやる」


強面のOB先輩の言葉にホッと息をつく。


「あたしの言葉を信じないで、なんでルイスやそこの女の言うことを信じるのよ!」


「何なら他の客に尋ねてもいいぞ。

 誰か婚約破棄騒動の間、こいつが何か話すのを聞いたか?」


強面のOB先輩がギロリと睨みながら、周囲の生徒に尋ねる。


その場にいた全員が無言で首を横に振った。


「卒業パーティを卒業パーティで婚約破棄を叫ぶ奴から守る会」に虚偽の訴えをしたい奴はいないようだ。


これで俺の冤罪は完全に晴れたな。


俺は胸をなでおろした。


「どうやらあんたの味方はいないようだ、嘘つきのお嬢さん」


「きーー! ムカつく!

 でもルイスがあたしに日常的に暴力を振るっていたことや、デートやお茶会をすっぽかしていたことや、誕生日にプレゼントをくれなかったことや、酔った勢いであたしを寝室に連れ込んで乱暴しようとしたことは本当なんだから!

 ルイスはパワハラやモラハラする、スケベで最低なDV男よ!!」


「と、この女は言っているが実際どうなんだ後輩?」


強面のOB先輩が俺に尋ねる。


俺は無言で首を横に振る。


「もう、話してもいいんだぞ。

 婚約破棄の共犯として連行したりしない」


「リンディーの言っていることは全部嘘です!

 俺は彼女に暴力を振るったことは一度もないし、エッチなことをしたこともありません!

 それどころか俺は彼女に指一本触れたことはない!

 俺は下戸だから酒によって彼女に乱暴するなんて、絶対にありません!

 第一、昨年の女神の生誕祭の前日に彼女は家に来ていない!

 それから俺は誕生日や女神の生誕祭に彼女に贈り物をしていました!

 それらのイベントのときプレゼントをくれなかったのは彼女の方です!

 デートやお茶会に誘っても『用事がある』『忙しい』と言って断っていたのも彼女の方です!」


やっと言えた。


ずっと声を出していなかったから声がかすれていた。


俺の言葉に会場内がざわついた。


「お前の婚約者はこう言っているぜ!」


「ルイスが嘘を言っているのよ!」


リンディーが往生際悪く言い訳をする。


「そうかい、じゃあこれはどうだ?」


強面のOB先輩が手を開き、リンディーの顔の前に付き出す。


彼女は何が起きたのか分からず目をパチクリさせていた。


「日常的に暴力を振るわれていたら、顔に手が近づいて来ただけで、顔を背けるなり、冷や汗をかくなりするはずだ。

 だがあんたは何も防御反応を示さなかった。

 あんたがルイス少年に日常的に暴力を振るわれていたというのは嘘だな」

 

強面のOB先輩の言葉に会場内がざわつく。


「そ、それは……暴力を振るわれていたっていうのだけは嘘で……」


「諦めな、お嬢さん。

 一つ嘘をついたら全部嘘だと思われるものだ。

 誰が本当の事を言っていたかなんて、どうせ調べればわかることだ。

 これ以上恥の上塗りをしないほうがいいぜ」


「うっさい! ゴリラ顔!

 くそーー!

 もう少しでうまくいくところだったのに!

 よくも邪魔してくれたわね!」


リンディーがギャーギャー喚いている。


「おいこのお嬢さんに猿ぐつわをしろ!

 これ以上神聖な卒業パーティを汚させるな」


強面の先輩が命令すると、部下と思わしき人たちがリンディーとウベルに猿ぐつわをした。


「騒がせて済まなかった!

 この二人は『卒業パーティを卒業パーティで婚約破棄を叫ぶ奴から守る会』のメンバーが厳しく取り調べる!

 みな卒業パーティを楽しんでくれ」


強面のOB先輩がそう言って皆にわびたあと、二人を会場の外に連行した。


彼らが消えると同時に一時は騒然としていたパーティがまた元の賑わいを取り戻した。



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