第28話 1日目−閉幕後
「で、どうするの?」
文化祭閉幕後の、校舎裏にて。
種田の問いかけに、中島はむーっと頬を膨らませる。
二葉が、夏目と中原の会話を聞いてショックを受けていたとき。
種田と中島は、それを少し離れた廊下の角からのぞいていた。
本当は、二人で開始前の準備を手伝おうとしていたのだが、種田がただならぬ雰囲気を感じ、ブースの少し手前でストップをかけたのである。
中原の馬鹿でかい声は彼女たちの元へも届き、その後、嬉しそうな顔をして出てきた中原を見て、二人は夏目の返事を察した。
そのとき種田がふと隣を見ると、中島がとても暗い顔をしていたので、種田はつい、
「文化祭が終わったら、話があるんだけど……」
と言ってしまい、今に至ったのだった。
「どうするの?って、なにが」
「……中原くんの、こと、好きなんでしょ……?」
「ちがうし!」
間髪を入れずに中島が叫んだ。
「あんなやつ、別に」
「……でも、夏目先輩と一緒に周ってたの、ちょっと……嫌だったでしょう?」
「それはっ……!」
中島は言葉に詰まる。それが全てを物語っていた。
はあ、とため息をついて、中島は近くの階段に腰を下ろした。その隣に、少し間隔を空けて、種田も座る。
「たぶん……そう。そもそも、この部活に入ったのだって、……あいつのせいだし」
「……告らないの?」
種田の言葉に、「あんたって意外と積極的なとこあるのね」と中島は呆れたように言った。
「無理に決まってるでしょ、あいつ、夏目先輩のこと好きなんだから」
「……でも、言わないと、後悔する」
「わかってるよそんなの」
「わかってない」
種田らしくないきっぱりとした物言いに、中島は驚いて口をつぐむ。
「ちゃんと、言ったほうがいい。今じゃなくて、いつかでもいいから、ちゃんと、伝えられるときに」
種田の言葉に、中島は何も言い返せなくて。
ただ、ぎゅっと目をつぶって、自分の気持ちに問いかけた。
『私は、どうしたい?』と。
桜色の栞紐 きなこもち @kinakokusamoti
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