SS7 向日葵

「ねぇ」


「なんだよ」


 読んでいる本から目を離さず、雨宮は返事をする。


「私、学校辞めるから」


「……は?」


 彼女の突然の言葉に、雨宮は、持っていた本を思わず落とした。


「なんで、だよ」


「うーん、転校?」


 彼女は、首を傾げながら言った。


「夏休み空けたら、私、もういないから。今までありがと」


「ちょ…ちょっとまて。まだ全然、理解が、」


「理解なんてしなくていいよ」


 彼女は笑う。


「私のことなんて、忘れてくれればいいよ」


 彼女の笑顔は、どこか悲しげで。


「そんなわけには、いかないだろ」


 雨宮は、立ち上がった。


「忘れられるわけ……ないだろ」


「じゃあ、」


 彼女は、窓の外の向日葵に顔を向けた。


「私との約束、忘れないでね」

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