SS5 約束

「ねえ」


「なんだよ」


 彼女の呼びかけに、雨宮はぶっきらぼうに答える。


「宝探しゲームしよ」


「急にどうしたんだよ」


「開催は10年後、舞台はこの学校」


「遠いな」


 はぁ、と雨宮は彼女の冗談にため息をつく。

 しかし、彼女の顔が本気な時の顔であることに気づき、雨宮は読んでいた本を閉じた。


「10年後にここに集まるってこと?」


「いや、10年後私は来られないので」


「おい、主催者」


「雨宮くんは、まあ……ここの先生にでもなったら?」


「はあ?」


「いいじゃん、進路悩んでるんでしょ?」


「悩んでるけど、別にお前に指図されるいわれはない」


「……そうだよね」


 そんな、彼女にしてはやけに素直な言葉に、雨宮は少し動揺する。


「まあ、ゲームには参加してやるよ」


「やったね」


 彼女はにひひ、と笑う。


「じゃあ10年後、頑張ってください」


「はーい」


 適当に返事をすると、雨宮はまた、読書に戻っていく。


 外では、蝉が静かに鳴いていた。

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