第13話 新しい仲間

「で、おまえらが中原と種田か。」


 二葉はそう言ってため息をつく。


 先週入部した二人の一年生。

 しかし、二人ともほぼ情報を残さずに帰ってしまったので、今日、きちんと色々確認する必要があった。


 なのに、二人が来たのは部活終了間際。これからの活動が思いやられる。


 二葉は、男子生徒の方を指さす。


「お前が中原だな?」


「はい、中原です!よろしくお願いします!」


そう言って、その男子生徒–中原–は深々と頭を下げる。


「あ、あぁ。」


 動揺したのか曖昧な返事を返す二葉の後ろで、夏目は彼の入部届を見る。


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氏名 中原空なかはらそら


クラス 1-5


入部理由

小説が書きたいため。

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 割とあっさりとした入部届だが、夏目的にはやりたいことがわかればこの程度で十分だ。


「そんでお前は?」


 二葉はそう言って、女子生徒の方を見やる。


「種田です……お世話になります……」


 夏目は、彼女の入部届を見た。

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氏名 種田一葉たねだいちは


クラス 1-4


入部理由

俳句

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 こちらもあっさりとした……というか名詞しか書いていないが、とにかくわかりやすい入部届だ。


 この二人、もしかして似ている……?とぼんやりと夏目が考えていると、


「こんにちはぁ……」


 ドアが開く音とともに、一人の少女が部室に入ってきた。


「文芸部はこちらで合っているでしょうか?」


「はい!」


 なぜか中原が大きな声で返事をする。


「仮入部に来たんですけど。」


『仮入部だと⁉︎』


 その女子がそう言ったので、夏目は慌てて彼女を近くの席に座らせる。


 あわあわしながら、夏目ははっとして、机の上の部誌の山から、一つを取った。


「とりあえずこれ、部誌です。もらっていってください。」


「あ、ありがとうございます。」


 そう言って彼女は頭を下げる。すると、


「あの、僕それ、もらってないです。」


 と中原が言った。


「そりゃおまえ、先週一瞬来て帰っていったからな。渡す暇がなかったんだよ。」


「すみません……」


 しゅんとしてしまった中原と、もう一人部誌を渡していない種田に部誌を渡す。

 すると、部活終了を告げるチャイムが鳴ってしまった。


 じゃあ、今日は解散にしましょうか、と夏目が言おうとしたそのとき。


「あ、終わりですね。じゃあもう帰ります。」


 そう言って、新しく来た彼女は部室を出ていく。


「おい待て!」


 二葉がそう叫ぶ。


「まだ、名前を、聞いていないんだが……」


 今年の一年生、自由すぎるだろ。夏目は心の中で思いながら、小さくため息をついた。

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