第11話 部誌
「できたぁ……」
夏目は満足感とともに大きく伸びをする。
今日の朝刷り上がった部誌をひたすら織り込むこと15分。やっと25部の部誌が完成した。
「手ぇ痛ぇ……」
そう言って二葉が手をぶんぶんとふる。
「文化祭の時はこれの10倍ですからね。」
「うわ、まじか……」
「文化祭のときの私たちが大変にならないためにも、勧誘がんばりましょう。」
そう言って夏目は、目の前の部誌を一つ取り、ぱらりとめくった。
結局二葉は、ファンタジー系の漫画を提出した。
原稿の状態で夏目は一度目を通したが、綺麗なストーリー展開に度肝を抜かれた。
これなら小説を書かせてもきっと上手いのだろう……と思うが、そんなこと言っても下手に二葉を惑わせることはわかっていたので、夏目はそれをそっと心の中にしまっておくことにする。
「先輩、やっぱり上手だよな。」
二葉がなんてことないように言った。
よくこんなにさらっと人のことを褒められるな、と夏目は妙に感心する。
「二葉くんのも、絵もストーリーも、すごく素敵です。」
夏目は、少し絞り出すように言った。もちろん本心だが、人を褒めるのはなんだか恥ずかしいような気がしてならないのだ。
「……うっす。」
二葉は少し頭を下げる。夏目は「よし!」とパンと手を叩いて、立ち上がった。
「あとは、新入部員を待つだけですね!」
***
「来ない……」
結局、誰も来ないまま一日が終わった。
「ま、来週来るんじゃね?」
二葉はそう言って立ち上がる。
「そうだといいんですけど……」
夏目は机にぐでっ、と顔を伏せる。
「帰るぞ。」
二葉がそう言って、手をクイっと曲げる。
「来週きてくれますように……」
夏目はパンパンと手を叩いてから、「はーい。」と返事をして、立ち上がった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。