第一話 蛍石は始まりを告げる④
振り向くと、立っていたのは、珠里の他に注目を集めていた異国人の少女だった。
背は低く、珠里の肩くらいの位置にフードを
少女は顔を隠すように被っていたフードを外す。
その下から
小ぶりな顔に輝く金色の髪。瞳は
突然の介入者に、珠里も、目の前の二人の貴族もすぐに反応できず、
「握りのところが
異国人の少女に、我に返った春琳が言い返す。
「そんなの、あくまで設計図上の話でしょう。そんなことができる彫刻師なんて、聞いたことがありませんわ」
だが、金髪の少女は、聞こえていないように真っすぐに珠里を見つめていた。
「あんた、自分の夢のために、遠い場所から宮廷彫刻師になりに来たんでしょう。そのまま黙ってたら、あんたの夢は終わるわよ。あんた、それでいいの? あんたの夢を、あんたが守らないでどうすんのよ」
「それは、駄目ですっ」
珠里は思わず、言い返す。
さっき、どれだけがんばっても出なかった声が、なんの抵抗もなく出ていた。
金髪の少女の言葉に、強く背中を押された気がした。
「私は、宮廷彫刻師になるために来ました。そこに、噓はありません」
顔を上げ、名も知らぬ異国の少女に向けて告げる。
「だったら、さっさと推薦状を出してくださらない」
再び口を挟んだのは春琳だった。金髪の少女に無視されたのがよほど不愉快だったのか、
「受験者の全員が推薦状を持っているわけじゃない。受験資格を得る方法は二つある。名門工房の推薦状を
金髪の少女の言葉に、珠里ははっとする。
「それなら、あります。これが、審査結果です」
珠里は、いつも大事に肩から下げている
名門工房の推薦状は、最低限の実力は必要だが、工房との利害関係や師弟関係などによる
春琳は、珠里が開いた審査結果を見つめ、本物であることを確認すると、面白くなさそうに顔を
「そういうことなら、もったいぶってないでさっさと言ってくださらない」
白けたように言いながら去っていく。梨寧も、慌てたようにその後に続いた。
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