第5話「ハッシュドポテトのビーフシチューのアップルパイ」
私が木箱を借りて来る間に、ルイス様は親猫と仔猫を見つけ出し、保護していました。
母猫が一匹と、仔猫が四匹。
「これで全部かな」
猫達は木箱の中でハムを食べている。
このハムはお昼に私が残したお弁当に入っていた物だ。
あの時はサンドイッチが食べられなくて悲しかったけど、今はこうして猫達のご飯になって良かったと思っている。
「雨が降る前に見つかってよかったです」
「本当にそうだね」
「ところでルイス様は今は寮暮らし、寮はペット禁止、ご実家のタウンハウスは改装中ですが、どちらで猫を飼うつもりですか?」
「詳しいね。実家が改装工事中な事をエリーゼ嬢に話したかな?」
やってしまったわ!
好きな人の事を知りたくて、色々と調べ回っていたのが仇となった!
このままだと、寮暮らしで家庭の味に餓えているルイス様を家に招き、私の手作りビーフシチューと、ハッシュドポテトと、アップルパイを振る舞って、ルイス様に「エリーゼ嬢って意外と家庭的なんだね」と言って貰おうと計画していたのがバレてしまうわ!
「それは、ハッシュドポテトのビーフシチューのアップルパイで……!」
「……?」
私はテンパる余り、意味不明な事を口にしていた。
「か、風の噂を聞きました。宰相である父の元には色んな情報が集まってくるんです」
適当な言い訳をして誤魔化した。
「そうなんだ」
彼は私の嘘を信じてくれたようだ。
「とにかくご実家には頼れませんし、寮では猫は飼えませんよ」
「寮でこっそり飼っちゃだめかな?」
「バレた時、寮を追い出されて困るのはルイス様でなく、猫達ですわ」
「それは困ったね。その時は猫と一緒に家探しをしなくちゃいけない」
ルイス様が猫と一緒に寮を追い出され、そこに私が手を差し伸べれば、高感度アップ&ルイス様と同居できる!!
……って、こんな発想をしてはいけない!
これではエメリッヒ伯爵令息と同レベルになってしまう!
「し、仕方ありませんね。その猫達は我が家で責任を持って面倒をみます」
「本当?! ありがとう! エリーゼ嬢!!」
不意にルイス様に手を握られ、私は卒倒しそうになった。
きゅ、急なスキンシップ禁止!
「そ、その代わり、週に一度は当家を訪れ猫達の様子を確認すること! その際、わ、私の手作りビーフシチューとアップルパイを食べていくこと! それが条件です!」
私はさり気なくルイス様が当家を訪れる条件と、私の手料理を食べる条件を追加していた。
「勿論行くよ! 絶対に行く! 猫達の事を宜しく!」
彼は満面の笑顔で即答した。
彼の笑顔の中に、私の手料理を食べられる事の喜びが含まれていたら嬉しい。
◇◇◇◇◇
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