第48話 覚醒


 覚醒なんてどうやってするんだ?

 いやいや、ならないよそんなのには、

「覚醒するの?」

 カグヤに聞かれても、

「しないに決まってるだろ」

 としか言いようがないし、この世の全てを壊したくはない。

 暗黒龍は目を閉ざしている。

『それが運命でございます』

 運命って言われてもねぇ?

「いやいや、そんなこと言われても俺は俺だし。そんな覚醒なんか」

『しかし、魔王様にはなっていただかねばいけません』

「だからならないって言ってるだろ?」

 龍の顔が怒りに満ちている。

『ならば変わって我が覚醒しようではないか』

 ドラゴンは本性を表してこちらに手を伸ばすが、その手が俺に届くことはない。


「無視しすぎだし。あーしらだっているから」

「ははっ!こんなに無視されたの初めてっすよ」

「シンジと意見が合うなんてな!」

 三人がドラゴンの右手を切り刻んでいた。

『ウガオオオォォォォォ』

「あまりなめるな」

「虫唾が走る」

「守りますよ!」

 カグヤ、十六夜、真希が追い討ちをかける。

「いっけぇぇー!」

 後方から拡散されるユカリの矢のシャワーを浴びてたじろぐドラゴン。


『なぜこのような兵隊を持っておるくせに!!』

 兵隊?馬鹿なことを言うなよな。

「兵隊なわけないだろ!ダチだボケ!」

 友達だ馬鹿野郎!


 暗黒龍は倒されて行く。


『ならなぜこのダンジョンに!』

「運命だからだよ」


 そう言って暗黒龍の頭に天龍剣を刺してドラゴンは消えて行った。


「あれ?倒した?」

 ユカリそれはフラグだ。

「なっ!なんでドロップ品がない?」

 やっぱりかよ。

「チッ!まだ生きてやがるか」

 奥から歩いてくる影が見える。

『私はこの姿が大嫌いだが、魔王になるためならプライドも捨てよう』

 龍が人の姿になったのか、

『クハハハハ、力が湧き上がってくる』

「うるせぇよ!第二ラウンドだカハッ!」

 タダスケが爪で抉られるが、

「ヒール!この野郎!烈空斬」

 シンジが直ぐに回復魔法を掛けて大剣で攻撃するが傷一つつかない。

『効かぬようだぞ?お主らでは私は倒せないようだな』

“ブブッ”

 こんな時になんだよ?

 ・暗黒龍を倒す 0/1

 んなことはわかってんだよ!


「行くよ!タマキ」

「来い!ユカリ」

 ユカリが弓でタマキの槍を飛ばすとそれを受け取って加速する。

「雷神斬」

『ぐはっ!は、ははっ!今のはやばかった」

「くっ!もっと強い武器であれば」

 タマキの槍はバラバラに壊れてしまった。

「旋風大手裏剣」

『くっ!前が見えないではないか!』

「私の夫をやらせはしない!電光石火」

『グアァァアァ』

 カグヤが何度も切り刻み出てくると、負傷した暗黒龍がそこにいた。

 よく見ると体から煙が出ている、自動で治癒しているのだろう。


「はあぁぁぁ!ソラ!行くぞ」

『キュキュゥゥ!』

「業火滅却剣」

 剣に業火と消化液をコーティングしたものだ!

『グハッ!さすが魔王になる器は私に傷をつけるか!』

 仲間のつけた傷はもう癒えたようで俺の剣が肩から半ばまで斬るがそこから動かない。

「うおぉぉ!」

『グゥゥゥゥ!』

 暗黒龍は手で剣を触ると抜こうと試みるがそれをさせないために力を入れる。

『キュキュゥゥ!』

『グアッ!』

 ソラが消化液を暗黒龍の顔面に放つと剣は入って行く。

『グアァァアァ!』

「おらあぁぁぁぁぁ!」

 斜めに斬られて動けるはずがない。

 暗黒龍は口を動かし、

『…流石魔王になるだけのことはあるな』

「ならない!俺は俺だ」

『そうかな?』

 体が斜めに斬られたまま灰になって行く。


 ドロップ品は黒い球に暗黒龍の鱗、巨大な魔石だった。

“ブブッ”

『実績達成、勇者の称号を得た』


「は?」

「勇者の称号?」

「魔王じゃなくてか、良かったじゃないか!」

 勇者の称号を得たら何か徳があるのか?たしかユニークで勇者がいたような。

「あ、まぁ良かったのかな?」

「それ加工に入れてみようよ」

 タマキがそう言うので、

「えー、碌なものにならなくないか?」

 一応加工屋に入れてみる。

 ・暗黒剣

 ・魔王の鎧

 やっぱりな、だめじゃないか!

「あ、これあかん奴」

「うんごめん」


 宝箱にはクリスタルの剣と王冠、金貨が入っていた。


 みんな気味悪がって王冠には触らないので王冠を収納しようと持つ、すると頭に入ってくるのは人間の汚いところだけ。なぜか王冠は手から離れない。


 なんなんだこの嫌な気分は、どうしてだ?この嫌悪感は、

「どうしたタクマ「触るな!…触らないでくれるか」あ、あぁ」


 あぁ、頭が焼き切れそうだ。


 これが暗黒龍の言ってたことか?なら早くこの手を離さないと、

 離れない?ダメだ、頭に乗せたら、

「これ以上タクマに触れるな!」

 カグヤが王冠をサーベルで斬り落とす。

“カランカラン”

「は、はぁ、はぁ、はぁ、」

「タクマ、大丈夫か?」

「はぁ、はぁ、あ、ありがと」


 そこで俺は意識を手放した。

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