第41話 平和な


 俺がこのダンジョンを握ってるのか?

「そうだな、軽く考えろよ!」

「そうっすよ、それこそ魔王にでもなった気分で」

「ばか!タクマはそんなひとじゃないでしょ」

「でもダンジョンを操れる」

「そうだな。俺には大それた力だ」

 ダンジョンは俺にかかってるのか。

「とりあえず元に戻したんだから結果オーライっしょ!」

「そうですよ、このままアプリを使わなければなんてことないですって」

「そうか、そうだよな」

 でも、どこか引っ掛かるんだよな。

「まぁ、今まで通り行こうぜ」

「ですね」

 と言ってその日は別れた。

 カグヤと部屋に戻ると自分が怖くて震えてくる。

「大丈夫、私が着いてる」

「あ、あぁ」

 レベルを上げるのが楽しくてダンジョンに潜っていたが、これは想定外だよ。


 俺のやってることはゲームの魔王と何ら変わらない。

 ダンジョンを増やして人を殺しているんだ。

「違う!ダメ!私達がついてるからそんなふうに思わないで!」

 そ、そうだな、俺は消すことだってできるんだからな。

「そうよ、私達は今のまま過ごせばいい」


 ヒントアプリには、

・素振り一万回 210/365

・ダンジョン攻略 0/10

・ダンジョン生成 0/15

 と書いてある。

 こんなアプリがあるからいけないんだ。

 消すことはできないみたいだが、アプリの裏に隠してしまう。


 俺はこれからゆっくり過ごすことにする。パーティーも抜けよう。カグヤと一緒なら大丈夫だ。


「わかった、それじゃあみんなに言わなきゃね」



 次の日、俺たちはパーティールームで話をしていた。

「じゃあもうやめるってこと?」

「あぁ、流石にダンジョンに近くなり過ぎた」

「別に近くてもいいじゃないっすか!」

「やめろ、タクマがきめたことだ」

「そう、私もやめるから」

「カグヤもか」

「なーんだ!がっかりだよ!そんなタクマ見たくなかったよ!」

 ユカリは出ていった。

「私も同感だ」

 十六夜が後を追いかける。

「わたしはしょうがないと思います」

 真希がそう言うと、

「あーしはべつに、やってもいいと思うけど、タクマが決めたならしょうがないね」

「悪いなみんな」

「いや、俺たちもタクマに頼ってたからな」

「そう言ってもらえると嬉しいよ」


「それじゃあパーティー解散だな」

「あぁ、みんなは頑張ってくれよ」

「まかせとけっすよ」

「あーしはほどほどに」

「頑張ります」

「タクマ、ありがとうな」

 パーティー解散を押す。


 外に出ると伸びをして、これでダンジョンともおさらばだな。

「タクマ、いいの?」

「あぁ、スッキリしたよ」


 それから一年が経つ。


 俺とカグヤは結婚をした。

 まぁ籍を入れて写真を撮っただけだが、それでいいと言ってくれた。

 俺は今ダンジョンから出るゴミの分配場で仕事をしている。

 まぁ、しなくてもいいくらいの金はあるが、何かしていたかったんだ。

「タクマ、今日は給料日だぜ?飲みに行かないか?」

「おっ!いいね!」

 それなりに友達もでき、まぁ、幸せだな。


「かぁ、美味いねぇ」

 安い居酒屋だがこれでいいんだ。

「おっ!また十六夜が一位か!俺としては紫ちゃんに頑張って欲しいけどな!」

 新聞を開くとそう声をかけてくる。

「あはは、ダンジョンランキングですか?」

「そうだよ、俺だって力があればこんな仕事なんかしてねぇっての」

 この人はマサさん、ユニーク無しの一般人だ。

「タクマは誰推しだ?」

「俺っすか?んー、白井ですかね」

「かっー!渋いとこついてくるね!双剣の白井忠輔だろ、男じゃあいつに憧れない奴はいないよ」

「あはは、大垣もどうですかね」

「また男かよ、大垣はなかなかいい線行ってるけどまだまだだな」

 こんな言われ方したら怒るんだろうなあいつ。

「あははは、まだまだっすか」

「そうだ、大剣持ちだと一位だが、それだけだからな」

 ダンジョンランキング、勝手にランキングにしていてそれが世界中から注目されている。日本が席巻しているからだ。

 それにしても日本が上がっているのはあの六人以外いないんだがな。

 世界からオファーが来ているらしいがどうするのかな?

 まぁ、俺には関係ないけどな。


「そういえばダンジョン保護法はどうなってます?」

「なんだ?ニュースを見てないのか?ドイツとインドでスタンピートがあって保護法を止めろって声が上がってるの」

「そうなんですか。てっきりスタンピートは起きてないもんだと思ってましたよ」

 海外でスタンピートが起きたんだな。

「日本は起きてねえけど、海外じゃ稀にあるぜ?ニュースくらい見ろよな」

「あはは、そうっすね」

「まぁ、それより飲むぞ!」

「うっす」

 その日は午前様で帰ってカグヤに怒られた。


「海外じゃスタンピートが起きてるんだって?」

「なによ、朝からダンジョンの話?そうね、スタンピートはおきてるわね。やっぱり一攫千金を狙って無茶なダンジョン潜りしてるんじゃないかしら?」

 レベルに見合わないのにそんなところに行くなよな。

「まぁ、日本は安泰だけどね」

「そうだな」

 タダスケ、シンジ、ユカリ、タマキ、十六夜、真希が色んな県で活躍してるらしいからな。


「おっと、遅刻してしまう!いってきます!」

「いってらっしゃい!」

 ちゅっ!

 いってきますのキスは忘れない。なんたって新婚だからな。

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