第12話 始まり


 一ヶ月が経ち、俺とソラは50階層を突破しようとしていた。

「さぁ、これで50階層突破だな!ソラ」

『キュキュキュッ!』

 49階層の扉を開けると、そこにいたのはドラゴンだった。

「うおっ!でかいな!」

 グリーンの体に苔が生えている老竜が寝そべっていた。

『まぁ、ドラゴン族じゃからな』

「お!喋れるのか!」

『まぁの、お主たちは何をしにここまで来たのじゃ?』

「このダンジョンを攻略しないと四年後にダンジョンがあちこちにできるらしい」

『それを本当に止められると思っておるのか?』

「えっ?違うのか?」

『このダンジョンは始まりのダンジョン、どの道攻略しても広がる事を止めることなどできないぞ?』

 じゃあ何で?

「ここに和哉という男が来なかったか?」

『来たな。ワシの話を聞いて絶望しておったわ』

 じゃあ何であんな手紙を残しておいたんだ?

「嘘だろ?ここを攻略すれば止めることはできるんだろ?」

『もう各地に広がっている、こんなことで嘘は言わん』

 なんてことだ!もう各地に広がっているならさっさとみんなに知らせなきゃならないじゃないか!


『どれ、一つもんでやろうかの』

「なっ!話ができるんだ、戦う必要はないだろ?」

『ここまで来たんだ、ワシの糧となれ』

「くっ!ソラ!行くぞ!」

『キュッ!』

 

 老竜は空を飛びながら火炎を吐いてくる。

「ソラ消化液だ!」

“ジュワワワ”

 火炎と混じり合って空を飛んでいる老龍にはダメージが入っているようだ。

「この!」

 降りて来た老龍をミスリルソードで斬りさく。

『こ、この』

「ファイヤーウォール」

 火を出すからって火が無効ではないだろう。

『グアァァアァ』

「ソラ!また消化液だ!」

『キュゥゥゥゥ!』

 消化液が火で蒸発して老竜にダメージを与える。

『グアァァアァ』

 その間に俺は尻尾を斬り裂き背中に乗って駆け上る。

「これでも喰らえ!」

 首を斬り裂き血が吹き出す。

 倒れた老竜は灰となり残ったのは竜の鱗と大きな魔石だった。

 宝箱には金貨がぎっしり詰まっていた。


 そして、50階層の階段は出てこなかった。


「まじかよ!もう各地に広がってるんなら自衛隊も知ってるはずじゃねぇか!」

 

 クロガネにメッセージを送ると返って来た。

『今夜話がある』

 俺とソラはここに何かないか探し、核のようなものを見つけたのでそれを回収しようとしたら、

『警告、ダンジョンコアを持ち出すとこのダンジョンは無くなってしまいますがどうしますか?』

「もちろん持ち出すに決まってるだろ!」

 俺とソラは階層転移で自宅まで転移して来たらキッチンにあった扉は無くなっていた。


 夜になってクロガネ達が訪ねて来た。ここは2LDKなので六人もくると手狭だが何とかなるな。


「クロガネさんは知っていたのか?」

「いや、今日初めて知った。本部に直接聞いたらもうそれなりに拡大していてそれによって死者も出ているそうだ」

 クロガネさんは悲しそうな顔でそう言った。


「ならなぜ広めないんだ?」

「戦えるものがいなかったらしい。銃火器も効かないダンジョンでは亡くなった兵士が沢山いたらしい。始まりのダンジョンが見つかってなかったことが原因だと思う」

 白井さんが言うと、残りのメンバーもやるせない気持ちになったようだ。


「今日、始まりのダンジョンは消滅を確認した。気付いたら外に出ていたからな」

「それは俺がダンジョンコアと言うのを取ったからだ」

「そうか、拓磨殿が先にダンジョンを攻略したか」

 クロガネさんは落ち込んでいた。

「いや、これからでしょう!各地にダンジョンが広がっているんならそれを止めないと」


「現在確認できたダンジョンはもう数百…海外まで行けばもっと多くなる」

「…そんな」

「ダンジョンコアを渡してもらえないだろうか?それを研究施設に渡してくる」

「それはいいけど、これからどうなるんだ?」


「政府はダンジョンを公表するように話を進めているらしい」

「そんなことしたらパニックにならないか?」

「数年前から異世界物のアニメや映画なんかが流行っているだろう?それはその下準備だ。ダンジョンに潜る冒険者を一般人に募ると言うわけだな」

 

「そんな前からダンジョンは発生していたのか」

「始まりのダンジョンが出て来てようやく希望が見えたのだ。私達が最初から知っていたら死に物狂いで拓磨殿を軍に入れただろう」

「あぁ、仲間を信じるよ」

「分かってくれて嬉しいよ」

 クロガネさん達も使われる側だったんだからそりゃ悔しいだろう。


「これからは私達が一般人にステータス発行をして行くことになると思う。それかダンジョンコアにその能力があればいいのだが」

 その時“ブブッ”とスマホが鳴る。


 ・ダンジョンコアを加工屋に預ける 0/1


「これをするからちょっとダンジョンコアを預けるのは待ってくれ」

 スマホを見せると頷くクロガネさん。

 ダンジョンコアを加工屋に預けるとダンジョンボードという名の物が百個出来た。

「多分これがあればステータス付与は楽になるだろう」

「…研究所まで来てくれるか?」

「ははっ!仲間だから行くに決まってるでしょ?」

「あ、あぁ、ありがとう」

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