第4話 姉の場合
家族を見守ろう――
とか思ってるんだろうな、母さん。
傍から見ても、確かに男どもは母さんの掌の上で遊ばされているのが分かる。あらゆることをさらっと流して、彼等の「その気」を思い通りに操るのが上手いのだ。
ならば私もその流れに乗っておけばいい。下手に波風を立てる意味はない。自分の秘密を徒に明かして混乱させる手は無い。
いつものように文句を垂れながらも皿洗いでいちばん頑張るのは食洗機。今日は無理して手伝うのも出しゃばり過ぎだろう。そう思ってわざと横柄なふりをしてソファにだらりと身を預けている。
そこへ――
ピン――と「虫の知らせ」が入った。こちらも動かなければ。適当な嘘で家を出よう。
「あー、アイス食べたい」
「何よ急に。ハーゲンダッツはダメよ、明日みんなで食べるんだから」
「そんなの足りないよ。今は量が食べたい。スーパーカップが良い」
「俺はパシリなんて行かないからな」
先手を打たれてパシリを拒否された……という体に持ち込めた。よし。
「しゃーないな、自分で買ってくるわ」
「大丈夫か? こないだ爆発騒ぎがあったところだろ」
「いつの話よ。連続通り魔とかじゃあるまいし、別に気にしませーん」
「それだけの話じゃ無いじゃない、女の子が夜道の一人歩きよ? ……気を付けて行ってらっしゃい」
色々心配してくれる、ありがたい両親である。
さて。事後にコンビニでアイスを買うとして。
この町への『侵入者』に対抗する能力者。それが、今の私。
こないだは慌てて力加減を間違って、公園に張った戦闘用の結界をぶち抜いてしまった。おかげで件の『爆発騒ぎ』を起こしてしまったのだ。対策として、より広範囲に検知用の結界を張っておいて良かった。これで戦闘の前に下手に慌てる心配はない。
他の誰にも気付かれないように。特に家族には知られないように。
私の「秘密の任務」が、今夜も始まる。
家族には、秘密。 芒来 仁 @JIN
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