第4話 嵐の狂竜
「先ずは、あの大嵐に入らねば、近づくのもままならんぞ」
嵐の中、
「我、一匹なら入れなくないが……貴様が嵐に飲まれて消え去ってしまうな」
「俺のせいで、力を使えないなら俺を下ろしてもいいんだぞ?」
そう提案すらシグにファフニールは、シグを叱咤する。
「愚か者め。貴様、今どこにいると思っておるのだ?」
「貴様が一番安全な場所は、我が守ってやれるそこだぞ」
「確かにそうだな、ごめん」
ファフニールに乗っていなければ、避けられそうにない速度の風の弾丸と吹き飛ばされそうな風の強さにシグは、自分の言葉を謝った。
「じゃあ、この指輪の力でなんとかできないのか? 落ち着かせたりできないのか?」
そう提案するシグに、ファフニールは、こう告げる。
「使い方なんぞに我は、興味がなかったからな! 知らん」
そうファフニールは、バッサリと言い切った。
「しかしまぁ、我の力で下すにしろ、嵐に穴を開けなければ――」
そう作戦を考える一人と一匹に風の弾丸が、嵐の中から放たれる。
「うわぁ!?」
「あやつめ、こちらに気づいたな」
ファフニールは嵐の外周を回りながら、天征竜の攻撃を避けていく。
「我の張ってやった結界も、小物用だったからな……そう長く持たないぞ」
そう言ったファフニールに、シグは村の方へと視線を向ける。
村には、ファフニールの結界があったおかげで、風の勢いが抑えられてはいた。
だがしかし、その結界も大嵐を前に消耗しており、結界が壊れるのも時間の問題に見えた。
「どうしたら、いいんだよ……」
そうシグは、現状打破できない自分の力の無さに、こぶしを握りしめると、空から聞き覚えのある竜の咆哮が聞こえた。
「――グルルギャァ!」
「ん? なんだあの飛竜」
「あいつは……」
シグたちに加勢するように戦っていたのは、今朝シグの村を襲い、ファフニールの住む山近くまで追ってきたあの飛竜だった。
「グルルゥガ!!」
しかしその嵐を前に全く歯が立たず。
飛竜はダメージを受け、ボロボロだった。
「あやつが、土の飛竜か……そもそも上位存在たる竜に牙を剥こうとはな」
大地を抉る暴風に、土の飛竜が勝てる訳もないと、ファフニールは飛竜を憐れんだ。
「なんで、攻撃なんか」
シグはファフニールの背に掴まりながら、懸命に戦う嫌な思い出だった飛竜を見つめる。
「貴様が攻撃されているからだろう」
「お前!! もう攻撃しなくていい!」
そう叫ぶシグの声が届いたのか、飛竜はシグを見つめる。
シグが、幼い頃から恐ろしいと思っていたあの瞳は、純粋な眼でただシグを見つめていた。
そして一際大きく飛竜の咆哮が響く。
「グルルルル!」
「――成る程。捕まっておれよ、シグ」
その飛竜の声を聞き、何をするのか理解したファフニールは、シグに捕まっているように告げる。
「……おい、何する気だよ」
シグは、嫌な予感がしてファフニールに問うと、ファフニールはこう言った。
「あの飛竜が、道を開けると言った」
そう淡々と言ったファフニールは、飛竜の方へと向かう。
「おい、やめろ!」
そうシグの静止を聞かず、飛竜は大きく咆吼すると傷だらけの翼で、嵐の壁に衝突した。
「――大義であった! 土の飛竜よ!!」
その身を使い空けた嵐の入り口に入り込む最中。
ファフニールは、土の飛竜の主である竜の代行として、その飛竜の最期を賞賛した。
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