第22話 彼氏バレ
「はぁ……疲れた」
悠馬が家に帰ると、リビングで両親が腕組みをして待ち構えていた。
向かいの席に座り、悠馬は昨日山手線で寝過ごし、友達の家に泊めてもらったことを話す。
両親は悠馬の話を聞いて、「次からはちゃんと連絡するように」と一言お達しをしただけ。
悠馬はほっと胸を撫でおろし、地獄のような事情聴取を終えてリビングを後にする。
昨日の出来事を両親へ話し終え、ようやくお説教を終えて解放されたところだった。
肩を丸め、悠馬は廊下に出るなり盛大なため息を吐く。
ガチャリ。
すると、続くようにしてリビングの扉が開き、姉貴である寧々が姿を現した。
「良かったじゃない。お父さんもお母さんも大目に見てくれて」
すると、廊下の壁に寄り掛かって盗み聞きしていた寧々がにやりとした笑みで言い放ってくる。
「うん、姉ちゃんが上手くフォローしてくれたおかげだよ」
「まあね。流石に姉としても、あんなの見せれちゃったら、可愛い弟を守らないわけにはいかないっしょ」
寧々はそう言いながら、腰に手を挙げてドヤ顔を浮かべる。
両親には、終電を乗り過ごしてしまい、たまたま大崎駅に住んでいる友人(男)の家に泊まらせてもらったという設定になっている。
寧々には悠馬が異性の家に泊まったことが朝の鬼電によってバレてしまっていたけれど、オブラートに包んで両親に報告してくれたらしい。
おかげで、その点について深く言及されることはなく、後日悠馬が相手のご家族の元へお詫びの手土産を持っていくということで話がまとまった。
「まっ、今度泊ることがあったら、お姉ちゃんが気を利かせてあげるからいいなさいな」
「無いとは思うけど、その時はよろしく頼むわ」
「任せなさいって!」
姉貴はとんと自身の胸を叩くと、寄り掛かっていた壁から背中を離した。
「悠馬はお風呂に入ってとっとと寝なさい。私は出かけるから」
「……」
「何よ、その不服そうな目は?」
「姉貴はいいよな。夜遊びしても怒られなくて」
「私はそういうキャラだからね。んじゃ、行ってきまーす」
「いってらっしゃい」
そう言って姉貴は、手に持っていたコートを羽織り、玄関で靴を履いてそそくさと出かけて行ってしまった。
寧々は悠馬と違い、高校生の頃から大分荒れていて、夜更かしして朝に帰って来るのなんて日常茶飯事。
「非行に走っていないか」と、よく両親が心配していたものだ。
大学生になった今は、大人になったということもあり、両親も寧々に対して寛大になったのか、とやかく言うことはない。
「それにしても、姉貴はいくらなんでも遊び過ぎだと思うけどな」
出かけて行った寧々に届かない言葉を口にして、悠馬は自室のある二階へと上がっていく。
部屋に入り、ブレザーを脱いでハンガーにかけ、荷物をベッドの横に置いて風呂に入る準備を進める。
ピコン。
そこで、スマホの通知が鳴り、悠馬はスマホのロックを解除する。
メッセージが届いており、誰だろうとみて見れば、そこに書かれていたのは悠馬が一番危惧していた人物であった。
颯『来週の月曜日、朝時間あるか? ちょっと話したいことがある』
その文面を見て、悠馬は思わず顔を天井に上げてスゥーっと息を吐いた。
「終わった……」
利香の件が颯にバレてしまったと確信した瞬間であった。
恐らくこれは、呼び出しという名の修羅場。
やはり、彼氏持ちの異性の女の子の家に上がり込むべきではないと、悠馬は改めて実感するとともに、せっかくに土日を憂鬱な気分で過ごさなければならなくなってしまうのであった。
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