小学生の秘密

信仙夜祭

第1話 僕の密かな趣味

 僕には、秘密があった。

 誰にも言えない。言わないし。

 学校が終わったので、そのまま帰宅した。


「塾とか、友人とか面倒なんだよな……。正直、要らない」


 この間、サッカースクールを辞めたばかりだ。

 親は、次の習い事を探している。


「毒親としか、感じないよ。『塾に通わせている親』を演じたいだけじゃん。話題作りのために子供を利用するなよ」


 どうやら、世間体を気にしているらしい。

 それと僕の学力だ。平均点しか取れないので、夜中に怒鳴り合っていた。


 それよりも……だ。

 僕は、パソコンを立ち上げた。


「どれどれ……。今日の株価も値上がりしているな」


 最近の株価は、好景気だ。


 親が株式投資で失敗して、放置していたので、僕が運用している。

 お年玉を資金源にして、運用しているんだ。

 親は、もう忘れている。僕だけの秘密だ。


「11月の株式配当は、驚いたな~」


 ポストを受け取る係が、僕で助かった。

 とりあえず、48万円以下だったので、確定申告も必要ない。まあ、取引時に税金を引かれる契約だけどね。

 僕の郵便貯金は、結構な額になっている。

 そして……、今だ。


「総資産額が、1億円を超えたよ。やったね」


 ゲームなんかより、よっぽど面白い。


「どうしようかな~。一回利益を確定させるかな~」


 税金で結構持って行かれるので、売買は慎重にしないといけない。昔のデイトレイダーじゃないんだし。

 経済のニュースを見る。

 米国株は、今後不安定になって、日本株は一年は安泰か~。


「正直、このままでもいいかもな~。株式配当で、親の年収くらいは入って来そうだし」


 それよりも……だ。

 この秘密を何時まで、保ち続けられるかだ。

 最大の懸念の税金問題は、クリアしている。だけど、確定申告だ。

 今年は、免れない。


「僕も大分経済に明るくなったけど、もっと勉強して、世界情勢を事前察知できるくらいになりたいな」


 もうね、高校も行かなくていいかもしれない。

 自分の才能が、怖いよ。


 ――ピンポーン


「ん? インターホン?」


 玄関に向かうと、母親がドアを開けるところだった。


「国税局の者です。株取引について調査に伺いました」


「はっ?」


 母親が、間の抜けた返事をする。


『やっべ。何処かでミスったか?』


 その後、秘密がバレて叱られた。

 だけど、運用益を見た両親が、固まった。


「ふ~、やれやれ。秘密だったのにな~」


 子供のお小遣いを盗るなよ?

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