第4話

「プリシラさん、そんなに警戒しないでおくれ。今日は君に伝えたいことがあって来たんだ」そう言うと彼はユリシーズお嬢様をチラッと見ました。

「プリシラさん、君には大変失望したよ........まさか、君が密告していたなんてね..........」そう言って彼は嘲笑しました。私はすぐに反論しようとしましたが、それよりも早くユリシーズお嬢様が口を開きました。

「お言葉ですが、アナステシアス殿下。プリシラさんは、素敵な女性だと思いますわ!!!」その言葉を聞いた瞬間、思わず胸が熱くなりました。しかし同時に恥ずかしさもこみ上げてきました……顔が真っ赤になっているのが自分でもわかるくらいです。

「ふん、君に何がわかるというんだい?まあ良いさ、今日のところはこの辺にしておこう……また会おうじゃないか」そう言って彼は去っていきました。その後しばらく沈黙が続きましたが、ユリシーズお嬢様が口を開きました。

「プリシラさん、気にしないでいいわよ。なんて失礼な殿方..........」と言われました。その笑顔を見た瞬間、胸の奥から何かが込み上げてくるような感覚に襲われました。

そして私は思わず抱きついてしまったのです……自分でもなぜそんなことをしたのかわからないのですが、とにかくそうしたくなったのです。

すると彼女も優しく抱き返してくれました。その瞬間、心の中にあった不安や恐怖が全て消え去ってしまったような気がしました...........本当に不思議です。まるで魔法にかかったような気分でした。

「ふふ、今日は珍しいわね」

ユリシーズお嬢様がそう言って微笑みました。私もつられて笑顔になりました。

それからというもの、私たちの距離はさらに縮まりました。今ではいつでも一緒にいるような関係になっています。ユリシーズお嬢様は、本当に素敵な方です..........彼女に出会えたことを、心から感謝しています! これからもずっと一緒にいたい、そう思っていますが残念ながらそれは叶わない夢かもしれません……しかしそれでも良いのです。今この瞬間を大切にしたいと思いますし、ユリシーズお嬢様の幸せを願う気持ちに変わりはありません。だから私は最後まで彼女のそばにいようと心に誓ったのです!

「ふふ、今日は珍しいわね」

ユリシーズお嬢様がそう言って微笑みました。私もつられて笑顔になりました。

それからというもの、私たちの距離はさらに縮まりました。今ではいつでも一緒にいるような関係になっています。ユリシーズお嬢様は本当に素敵な方です..........彼女に出会えたことを心から感謝しています! これからもずっと一緒にいたい、そう思っていますが残念ながらそれは叶わない夢かもしれません...........しかし、それでも良いのです。今この瞬間を大切にしたいと思いますし、ユリシーズお嬢様の幸せを願う気持ちに変わりはありません。だから私は最後まで彼女のそばにいようと心に誓ったのです!

「ジェーン、何をしているの?」

うんうんと唸りながら色々な場所を周っているジェーンを覗き込むと、彼女は驚いた様子で言った。

「あ、プリシラメイド長……実はユリシーズお嬢様に頼まれたおつかいがありまして……」そう言って彼女は手元にある紙切れを見せてくれた。そこには丁寧な筆跡で「このお店の品々を買ってくること」と書かれている。

「あら、これは大変ね……私も一緒に行くわ!」

私はすぐに支度を始めた。そしてジェーンと共に屋敷を出て街へと繰り出したのだった……


「それにしても、すごい賑わいですね…何かイベントがあるのでしょうか?」とジェーンが言う。確かに、今日はいつもより人通りが多いような気がする……不思議に思っているうちに目的の店に着いたようだ。店内に入るとたくさんの商品が並んでおり、ユリシーズお嬢様の頼まれもの以外にも色々なものが目についた。

「あ、プリシラメイド長!見て下さいこれ!」と言って彼女が指差したのは小さなブローチだった。キラキラと輝く宝石があしらわれており、とても綺麗だと思う..........「可愛いですね」と言いながら嬉しそうに笑う彼女の顔を見るとこちらまで嬉しくなってきた。どうやらこれが気に入ったらしい……値段も手頃だったのでプレゼント用に包んでもらった。

その後、私たちは帰路についたのだが……途中で雨が降り出してしまったため急いで近くの軒下へと避難した。幸いにもそれほど強い雨ではなくすぐに止みそうだが、念のためしばらく待つことにしたのだ。「ふう……なかなか止まないわね……」私がそう呟くとジェーンが口を開いた。「そうですね……でも私はこういう時間も嫌いじゃないです」そう言って微笑む彼女を見て私も自然と笑みがこぼれた。そしてそのまま他愛もない会話をしていると、ふと彼女の首元が目に入った。

色白で綺麗な首だったが、先程のブローチをつけるとどんな風に映えるのかと好奇心が勝った。

「ジェーン、目をつむってこちらを向いてください。」

「.............?はい、わかりました」

素直に目をつむりながらこちらを向くジェーンの首元に、付属のフリルと一緒にブローチをつけてあげた。「ジェーン、もう目を開けていいわよ。」と言うと彼女はゆっくりと目を開けた後、自身の首元に触れながら言った。「わぁ!とっても素敵です.............!」その瞳はとても輝いていた。「似合っているわ……ほら、鏡を見てごらんなさい?」

鏡を彼女に渡すと嬉しそうに受け取りながら眺め始めた。その様子を見ているとこちらまで幸せな気分になってくるようだ……これからもこの笑顔を絶やさぬよう見守っていきたいと思った瞬間だった。

その後、無事に屋敷に帰ることができたのだが、ユリシーズお嬢様が出迎えてくれた時に褒められ、とても嬉しかった。「ありがとう、プリシラさん、ジェーン...........あなたたちにはいつも感謝しているわ」そう言って微笑んでくれた彼女の顔を見ると胸の奥底から温かい気持ちが込み上げてきて思わず泣きそうになったがグッと堪えた。

そんなこんなで自室に向かい、いつもの日記をつけることにした。今日はとても充実した一日だったと思う。ユリシーズお嬢様の笑顔がたくさん見られたし、ジェーンとも仲良くなれた……本当に嬉しいことばかりだ。明日もきっといい日になるだろう!そう信じて布団に入った。

「おやすみなさい、プリシラさん」という声が聞こえた気がしたが、すぐに眠りに落ちてしまったようだ...........。

翌日、いつものように朝起きて身支度を整えた後、食堂へ向かうと既に朝食の準備が出来ていた。今日のメニューは焼きたてパンにオムレツ、そしてサラダといったシンプルなものだ。どれも美味しそうに見えるが、不思議に思って辺りを見回した。

ユリシーズお嬢様は料理が苦手だし、一体誰が用意してくれたのだろう?不思議に思いながらも席に着こうとした瞬間、後ろから声をかけられた。

「おはようございます!プリシラメイド長!」そこにいたのはジェーンだった。

「ええおはよう、もしかして今日はジェーンが朝食を用意してくれたの?」

「はい!頑張ってみました!!」

今日はいつにも増して上機嫌に見える……何か良いことでもあったのだろうか?そんなことを考えているうちに朝食の準備が終わり、皆で一斉に食べ始めた。しかし相変わらずユリシーズお嬢様はお寝坊さんだ...........まあ仕方のないことだが..........

その後、いつも通り自室に戻って身支度を整えた後、屋敷内の掃除や洗濯などをこなしているとあっという間に時間が過ぎていく。一通りの仕事を終えた後は自由時間だ。さて、何をしようか?

「プリシラさん、ちょっといいかしら?」と背後から声をかけられたので振り向くとそこにはユリシーズお嬢様がいた。今日も可愛らしい……そう思いながら返事をすると彼女は続けた。

「実はあなたにお願いがあるのだけれど……」と言われた瞬間、嫌な予感が頭をよぎった……というのも以前も同じようなことがあったからだ。しかし断るわけにもいかないのでとりあえず話を聞くことにした。すると案の定とんでもない頼み事をされたのだった……その内容とはこうだった!

「私と一緒にお買い物に行って欲しいの」

「え……?」思わず間抜けな声が出てしまった。しかしそれも無理はないことだろう……何しろいきなりすぎる提案だったからだ。しかもお買い物って一体どこへ行くつもりなのだろうか?疑問に思っていると彼女は続けた。

「ジェーンと一緒に出かけたのでしょう?私のお買い物にも付き合ってくれる?」

そこで一旦言葉を切り、一呼吸おいてから再び話し始めた。「いいでしょう?行くわよっ!」そう言って目を輝かせる彼女を見て私は思った……ああこれは断れないパターンだ..........と。「..........わかりました」そう言って了承すると彼女は嬉しそうに微笑んだ。その笑顔を見ると断る選択肢なんて消えてしまう……我ながら単純なものである。「ありがとう!それじゃあ早速行きましょうか!」と言うが早いか、彼女は私の手を取り歩き出したのだった。


「いつ来ても街は人が多いわね…プリシラさん、はぐれないようにね!」

「ええわかっていますよ、ユリシーズお嬢様」そう言いながら私の手をぎゅっと握りしめる彼女の手は少し汗ばんでいたが、不思議と嫌な感じはしなかった。むしろ安心するというか……不思議な感覚だ。そんなことを考えながら歩いているうちに目的の店に着いたようだ。店内に入ると様々な商品が並んでいる様子が目に入った。ユリシーズお嬢様は目を輝かせながら一つ一つ見て回っている様子だが、正直言って私はこういった買い物に慣れていないので何を選べばいいのか分からない……そんなことを考えていると不意に声をかけられた。

「ユリシーズお嬢様、今日は何かお探しでしょうか?」声をかけてきたのはこのお店の女性店員だった。親切そうな笑顔を浮かべている彼女にユリシーズお嬢様は「ええ、実はこの子に何かプレゼントをと思って……」と答えた。すると店員さんはさらに笑顔を深めて言った。

「それは素敵ですね!それならこちらはいかがでしょうか?こちらの髪飾りなどはいかがでしょう?」そう言って差し出されたのは大きな花の模様が描かれた髪飾りだった。確かに綺麗ではあるが、果たしてこんな高価そうなものを貰っても本当に良いのだろうか……?そう思っていると今度はユリシーズお嬢様が口を開いた。「いいわねこれ……プリシラさん、どうかしら?気に入った?」

そう言われて改めて見ると確かに素敵だとは思う……でも値段が気になるところだ。「あの、ユリシーズお嬢様……このお値段なのですけど……」と言いかけたところで遮られた。

「あら、心配ならいらないわよ?これは私からあなたへのプレゼントなのだから!」と言って微笑む彼女を見て私は思わず見惚れてしまった。まさか私のために買ってくれるとは思わなかったからだ。

「ありがとうございます……!」と言うと彼女は満足そうに微笑んだ後、店員さんに向き直った。

そして会計を済ませた後、店を出て再び歩き出したのだが今度は別の店に寄ることになったようだ……一体どこへ行くつもりなのだろうか?

「プリシラさん、次はあのお店に行くわよ!」と言って彼女が指差したのはアクセサリーショップだった。どうやらまた何かを買うつもりらしい……一体いくらかかるんだろうと考えているうちに店に着いたようだ。中に入ると様々な商品が所狭しと並んでいた。

「へぇ…いい品揃えね、店主のセンスも光っているのね」と呟くユリシーズお嬢様を横目に見ながら商品を見て回っていると、ふとある物に目が留まった。それは銀色のリングにピンク色の宝石がついた可愛らしいデザインのものだった。

「あら、可愛いわね……これとかどうかしら?」そう言って彼女はその指輪を手に取った。

「すごくお似合いですよ、ユリシーズお嬢様」

「あらそう?じゃあお揃いにしましょうよ!」「え............?」突然の申し出に戸惑っているうちに彼女は店員を呼び止め、私の分の指輪を購入してしまったようだ。そしてそのまま私の手を取り店を出たところで我に返った私は慌てて言った。「あの……ユリシーズお嬢様?本当によろしいのですか?」すると彼女は笑顔で答えた。

「もちろんよ!さあ行きましょう!」と言って再び歩き始めた彼女の横顔を見ながら私は思った。この方はどこまで優しいのだろうと..........そんな彼女の優しさに触れるたびに胸の奥が温かくなっていくのを感じたのだった……

その後、屋敷に戻るまでの間ずっとお供していたのだが、ふと私が異変に気がついた。

「…ユリシーズお嬢様、下がってください!」

その言葉と同時に、わらわらとたくさんの兵士が周りを囲んできた。

どれも見たことのあるような顔だが…多分、アナステシアス殿下の差し金に違いない。「あら、何事かしら?」ユリシーズお嬢様は動じることなく微笑んでいる……さすが肝が据わっているというか、大物すぎる。しかしなぜ急に?今まで何もなかったのに。

そう思っていると突然背後から声が聞こえた。振り向くとそこには見覚えのある顔があった……確かアナステシアス殿下の側近の一人だ!

「お久しぶりです、御二方。」「貴方……!」

忘れもしない、以前ユリシーズお嬢様を連れていこうとした男だ。まさかこの男の仕業だったのか。

しかし一体どうやって?疑問ばかりが浮かんでくる……

「一体どういうことなのかしら?」ユリシーズお嬢様も困惑している様子だ。すると男は笑いながら答えた。「何を仰います!そちらこそ殿下を差し置いて楽しくお出かけなんて、許されませんよ!」そう言って剣を持った............まずい! そう思った時には身体が勝手に動いていた。ユリシーズお嬢様を庇う形で前に出ると、目の前の男に向かって叫んだ。「ユリシーズお嬢様は貴方のような輩に指図されるような方ではありません!!」

自分でも驚くほど大きな声が出た。すると男は一瞬驚いたような表情を見せた後、ニヤリと笑って言った。「ほう、面白いことを言うじゃないか?ならば覚悟を見せてもらおう!」そう言うと同時に斬りかかってきた。咄嵯に身をかわしたが、完全に避けきれず肩に軽い切り傷が浮かんだ。

「プリシラさんっ!?」ユリシーズお嬢様が心配そうに駆け寄ってくるのを見て、私は安心させるように言った。「大丈夫です、大した怪我ではありませんから……」しかし正直言って状況は良くない。相手は複数人いる上、こちらは二人なのだ……このままではまずいかもしれない。

そんなことを考えているうちに今度は二人がかりで襲いかかってきた!なんとか避けたものの体勢を崩してしまい倒れ込んでしまう……!ユリシーズお嬢様をお守りできず終わってしまうのか…と諦めたその時だった。

「君たち、何をしている?」

冷酷な声が聞こえたのでそちらを見ると、金色の艶のある髪の男性が立っていた。

彼はとても背が高く、すらっとした体型をしていた。

顔立ちはとても整っており、まるで彫刻のような美しさである。

「で……殿下の弟君!?」その場にいた全員が一斉に膝をつく中、彼はこちらを一瞥した後、ユリシーズお嬢様に向かって言った。

「これは一体何の騒ぎだ?」と尋ねられると彼女は少し戸惑いながらも答えた。「それが私にもよく分からなくて……」すると彼は私を見た後、再びユリシーズお嬢様に向き直り続けた。

「私の兄、アナステシアスが申し訳ない。なんと詫びを言えばいいか。」

そう言って頭を下げたので、慌てて私たちは止めた。

「いえ、そんな............!どうか頭を上げてください!」ユリシーズお嬢様はそう言って頭を下げたが、彼は首を横に振った。そして顔を上げると今度は私を見た。目が合った瞬間、背筋がぞくりとした気がした……まるで蛇のような冷たい眼差しだったからだ。思わず目を逸らしてしまったほどだった。すると彼はふっと微笑み言った。

「...........君もご苦労だったね」その言葉を聞いた時、私は理解した。この人は危険だと……本能的な恐怖を感じずにはいられなかったのだ……

彼は兵士たちに向き直り、怒りを込めた口調でこう言った。

「君たち早く去れ。兄には私から伝えておく。」

兵士は慌てて逃げていった。ユリシーズお嬢様も安堵した様子だったが、私はまだ緊張していた。この人の目を見ただけで心臓が止まりそうになっていたからだ……

そんな私の様子を察したのかユリシーズお嬢様は私に向かって微笑みかけてくれた。

その笑顔を見た途端、ふっと心が軽くなるのを感じたのだった……

「さて、君たちには色々聞きたいことがある。」そう言ってアナステシアス殿下の弟君は私たちに開き直った。

「その前に、自己紹介させてもらおう。先程も聞いたとおり、私はアナステシアスの弟のアンセルムだ。よろしく頼む。」

握手を求められたので、私は恐る恐る応じた。ユリシーズお嬢様も同じく応じていた。

「さて、早速本題に入らせてもらうが……まず君たちはなぜあそこにいた?」そう聞かれて一瞬言葉に詰まってしまったが、すぐに答えた。

「……私たちはお買い物をしていただけです」

するとアンセルムは眉を顰めたあと、深いため息をついた後こう言った。

「そういうことか……全くあの兄ときたら……」と呆れた様子だったので私たちも苦笑してしまった。それからしばらく沈黙が続いた後、再び口を開いたのは彼の方だった。「私の兄が粗相をしてしまって誠に申し訳ない。口うるさく伝えておくから、どうかこの度は許してもらえないだろうか?」そう言って深々と頭を下げられたので私たちは恐縮してしまった。

「いえ、こちらこそすみませんでした……」と謝るユリシーズお嬢様に続いて私も頭を下げた。すると彼は頭を上げつつ言った。「ふむ……君たちはなかなか礼儀正しいな?気に入ったぞ」と言ってくれたので少しほっとしたが、それと同時に不安もあった。本当にこれで大丈夫なのか?しかしそんな私の気持ちを見透かしたのか彼は続けた。「まあ心配することはないさ。君たちはただ買い物をしていただけだし、悪意も感じられなかった。」

彼が上品に笑うと、アナステシアス殿下にますます似ているなと感じてしまった。

その後は第二王子のアンセルム殿下とは別れ、ユリシーズお嬢様と屋敷に戻ろうと話をしていた。

「それにしても、あのアナステシアス殿下にあんなにもお優しい弟さんがいるなんて…」

「性格は正反対ですが、お顔立ちはすごく似ていらっしゃいましたね」「ええ、本当に。綺麗な方でしたわ……」

そんな会話を交わしながら歩いていると、突然後ろから声をかけられた。振り向くとそこには看板を持った女性が立っていたのだ。

「そこのお嬢様方、なんて可愛らしいの!そんな貴女達は甘味処は興味あるかしら?」

「えっスイーツが食べられるの?」

甘いものには目がないユリシーズお嬢様は目を輝かせている。私はスイーツというものをあまり食べたことがなかったので興味があった。

「そうよ、新製品を街の方たちに試食してもらっているの!うちのお店の自家製で美味しいのよ!」

「じゃあ行きましょうよプリシラさん!」とユリシーズお嬢様に手を引かれて女店主が経営しているお店の中に入ると、中は甘い香りが漂っていた。「わぁ……素敵ですね……」思わず感嘆の声を漏らす私を見て彼女は微笑んだ後言った。「さあ座ってちょうだい」促されるまま席に着くとメニュー表を渡されたので見てみると様々な種類のケーキやパフェなどが載っていた。どれも美味しそうだったのだが、特に新製品だと紹介されたローズマカロンは、女性たちがとても好きそうな見た目をしていると思った。

ユリシーズお嬢様も興味津々な様子でメニューを眺めている。そして二人で悩んだ末に決めたのは、ローズマカロンと紅茶のセットだった。注文を済ませた後、少し待つとやがて頼んだものが運ばれてきた。一口食べるとその美味しさに感動してしまった............!

「美味しいですわ!」目を輝かせながら言うユリシーズお嬢様は本当に幸せそうな表情をされているので見ているこちらまで幸せな気分になった。その後も私たちはこのお店がすっかり気に入ってしまい何度か通うことになったのは言うまでもないだろう。

「はぁ..........本当に美味しかったわね!やっぱりプリシラさんと一緒に食べるスイーツは格別だわ!」

そう笑うユリシーズお嬢様の笑顔はとても輝いていた。

「私もユリシーズお嬢様とご一緒できてとても楽しかったです」と言うと、彼女は嬉しそうに微笑んでくれたので思わず見惚れてしまった。

それから私たちはしばらく他愛のない会話を楽しんだ後、屋敷に戻ることにした。帰り道ではまた何か新しいスイーツを食べに行こうという話で盛り上がったのだった……

そして翌日、いつものようにユリシーズお嬢様のお部屋に向かう途中に応接室に向かうと、珍しく先客がいたようだ。それはアナステシアス殿下だった。彼は私を見るなりこちらに歩み寄ってきて言った。「プリシラ嬢か。先日は弟がお世話になったようだね。」

不気味に笑う彼の目は笑っていなかった。

「いえ、こちらこそ..........」と返すのが精一杯だった。

「ところでユリシーズ嬢とはうまくやっているかい?」と尋ねられたので私は素直に答えた。「はい、とても良くしていただいてます」と答えると彼は満足そうな表情を浮かべた後、続けてこう言った。「そうか……それならいいんだがね、これからはそのままでいられるか見ものだよ。」と言った後に再び不気味な笑みを浮かべたまま去っていったのだった……一体どういう意味なのだろうか?不審に思いながらも私はお嬢様の元へ急いだのだった……

「ええ、何もされなかったわよ?あの方、私よりプリシラさんに絡んでるわよね」と少し不機嫌そうに言うお嬢様。

「申し訳ありません……私のせいで……」私は申し訳なくなって頭を下げると彼女はすぐに言った。「あ、違うのよ?別にプリシラさんを責めてるんじゃないから!ただちょっとモヤモヤしただけよ」そう言って微笑む彼女を見ると心が軽くなった気がした。そして私たちは今日も一緒に過ごすのだった……

「今日は絵を描いてみようと思うの。絵画鑑賞はよくするけれど、実際にキャンバスに描いてみるのは難しそうね」

筆を右手に持ち、ユリシーズお嬢様は空を見上げて椅子に腰掛けた。「まずは簡単なものから描くのよ。確か風景画だったわね……」

そう言いながら筆をキャンバスの上に乗せ、ゆっくりと動かしていく。

「うーん……なかなか難しいわ」と言いながらも真剣な表情で作業を進めるユリシーズお嬢様は、まるで絵画の世界に入ったかのように見えた。

しばらくその様子を眺めているうちに、私はふとあることを思いついた。それは彼女が描いた作品を見てみたいという気持ちだった。

「あの、ユリシーズお嬢様。もしよろしければその絵を見せていただけませんか?」とお願いすると彼女は少し驚いたような表情を浮かべた後、嬉しそうに微笑んでくれた。「ええ、もちろんよ!」

私は彼女の隣に立ってキャンバスを覗き込む。そこにはまだ描きかけの絵があった。しかしそれでも十分に魅力的だった。繊細で美しい色合いが見事に表現されていると思う。きっと将来は素晴らしい画家になるだろうと感じたほどだった。

ふと隣を見ると彼女は少し照れたように俯いていた。どうやら自信がなかったらしい。そんな彼女の手をそっと握って微笑むと、彼女も笑顔になったので安心した。

「いい天気ね、プリシラさんは晴れた空の方がお好き?」

ふとユリシーズお嬢様がこちらを見て訊ねてきたので、私は笑顔で答えた。「はい、大好きです」と答えると彼女は嬉しそうに微笑んでくれたので私も嬉しくなった。

「そっかぁ……じゃあ晴れた日には一緒に散歩に行きたいわね!」そう言って微笑むお嬢様の笑顔はとても眩しかった……

それから数日後のこと、ユリシーズお嬢様は今日も絵を描いていた。

「ふぅ...........描き終わったわ」彼女の手元を見るとそこには美しい風景画が描かれていた。それはまるで本物の景色を切り取ったかのような出来栄えだった。私が感動しているとユリシーズお嬢様は少し照れくさそうに言った。

「貴方にプレゼントしたかったの、頑張って描いた絵を。 貰ってくれるかしら?」私は感動して言葉が出なかったが、すぐに我に返り慌てて返事をした。「ありがとうございます!大切に飾らせていただきます!」そう言うと彼女は嬉しそうに微笑んだ後、少し照れくさそうに俯いた後こう言った。

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頑張り屋の令嬢は追放されることになりましたが スカイ @sky_8u

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