第2話
クレティア公爵令嬢がいなくなってから、私たちはのびのびと気兼ねなく日々を過ごすことができました。 「それにしても、本当に色々とすごかったわよね、あの方」 ユリシーズお嬢様がマカロンをお上品に食べながら、ふとそんなことを口にされました。 「ええ、まさか国外追放された先で新たな事業を始めるだなんて……クレティア嬢の発想力には驚かされるばかりね」と私も応じます。 本当に色々な意味ですごい方だったと思います。 そんなことを考えていた時でした、突然ドアがノックされたのです。 私たちは顔を見合わせると、首を傾げながら返事をしました。 するとゆっくりと扉が開かれていきます……そこには見覚えのある人物が立っていたのです。 それは、第二王子であるアナステシアス王子でした。彼は少し緊張している様子です。 一体何の用があるのかと思っていると、アナステシアス王子は意を決したように口を開きました。 「実は……二人に頼みがあるんだ」 (一体何かしら……?)と思って彼の言葉に耳を傾けていると、意外なお願いでした。 なんと、私たちに貴族ばかりのパーティーに参加してほしいという願いじゃないですか!? そんな私たちの絶句した反応を見てか、アナステシアス王子は慌てた様子で弁解を始めます。 「あ!いや、その……別に無理にとは言わないんだけれどさ……」と彼は申し訳なさそうに言いましたが、それでも、ユリシーズお嬢様食い下がりました。 「いえ!是非ともプリシラさんと参加させていただきたいわ!」と力強く答えると、アナステシアス王子は嬉しそうに微笑んでくれました。 そして私たちは早速準備に取り掛かりました。
それから後日、早速オーダーメイドでドレスを作ることにしました。 「どんなドレスがいいかしら?やっぱり貴族の方たちも多いし、お上品なドレスがいいかな、それとも...」 ユリシーズお嬢様は、楽しそうにはしゃいでおられます。 私もまた、そんな彼女の様子を見て微笑ましく思っていました。 (いつも可愛らしいわ...) そんなことを考えていた時です。突然ユリシーズお嬢様が声を上げたのです。 「これだわっ!これにしましょう!」と言ってお嬢様が描かれたドレスは、刺繍やレースが施されたワインレッド色のドレスでした。 とても綺麗で上品なデザインだったので、私は思わず見惚れてしまいました。 「素敵ですね...........」と呟いてしまうほどです。 「プリシラさん、もし良かったら色違いでお揃いのドレスにしない?少し緊張してしまって。貴女と同じなら、きっと楽しめるわ」 と提案してくださったので、私は喜んでその申し出を引き受けました。 「是非ご一緒させてください」と伝えると、ユリシーズお嬢様は嬉しそうに微笑んでくれました。 そんなやり取りをしながら私たちは準備を進めていきました。 そしてついに当日を迎えます……緊張しながらも、なんとか会場に辿り着くことができました。 するとそこにはたくさんの貴族の方々が集まっていて驚きました。 こんなにたくさんの方がいらっしゃるなんて..........。 圧倒されながらも、私たちは早速受付を済ませることにしました。 「ようこそいらっしゃいました!招待状を拝見してもよろしいでしょうか?」 そう言われて私たちは招待状を渡します。すると受付嬢の方は私たちの顔をじっと見つめました。
そして少し驚いた様子を見せると、こう仰いました。 「あら!もしかして貴女方はプリシラ様とユリシーズ様ではないですか!?」と........。 突然のことに戸惑いつつも返事をすると彼女はさらに続けます。「やはりそうでしたか!お噂はかねがね伺っておりますわ!」と言ってくださったのです。 どうやら私たちのことをご存知のようです。そのことに驚きながらも、少し嬉しく感じました。 それから私たちは会場に案内されて行きました。するとそこには既にたくさんの方がいらっしゃいました。 やはり貴族の方たちは優雅なお召し物を着ていらっしゃいますね……そんな中に入っていくのは少し躊躇われてしまいますが、ユリシーズお嬢様と一緒なら大丈夫でしょう! 「プリシラさん、緊張している?」と尋ねられたので私は素直に頷きます。 すると彼女はクスッと笑ってこう仰ったのです。「私もよ」と。 その笑顔はとても美しく輝いていて見惚れてしまいそうになりますが、すぐに気を引き締めます。 そして私たちはパーティーを楽しむことにしたのです。 「ユリシーズ!プリシラさん!よく来てくれたね!」 そう声をかけられて振り向くと、そこにはアレクシオ殿下が立っておられました。彼は満面の笑みを浮かべています。 そんな彼に私も笑顔で挨拶を返すと、彼もまた嬉しそうに微笑んでくれました。 それから少し話をすることになりました……といっても主に喋るのは彼の方でしたが。 「それにしても驚いたよ!まさか君たちが来てくれるなんて思ってもなかったからさ。いっぱい楽しんでいってくれ」と言ってくださったので、私とユリシーズお嬢様は お礼を述べます。 「はい、ありがとうございます」 それからもしばらく話し込んでいると、不意に彼がこんなことを言い出されたのです。
「ねえユリシーズ……今度二人で食事に行かないかい?僕から誘いたかったんだけど、なかなか勇気が出なくてね……でも今なら言える気がするんだ!どうだ……?」 突然のことに驚いてしまい言葉が出ませんでしたが、ユリシーズお嬢様はなんとか絞り出して答えておりました。 「え、えっと……その……」 すると彼は少し不安そうな表情を浮かべてこう仰いました。 「やっぱりだめか……?」 お嬢様は慌てて否定します。「いえ!全然そんなことありませんわ!」と。 すると彼は嬉しそうな顔になりましたのでホッとしました。 それからも会話は続いていきましたが、さらに賑やかになったのです。 そしてパーティーが終わりを迎える頃になると、ユリシーズお嬢様は疲れてしまったのか眠たげな表情をされておられました。 そんな彼女を気遣ったアレクシオ殿下は、私たちに別れを告げて去っていかれました。 そして私たちは帰路につきました。 「プリシラ、ありがとう。おかげでゆっくり休めそうだわ」 とお嬢様は仰います。 「いえ、こちらこそ素敵なドレスをプレゼントしていただいて感謝しております」と答えると彼女はニコリと笑ってくれました。 そして翌日、私たちはまたいつものように過ごしました。 そんな日々が続くうちに、私はあることを考えていました..........それはユリシーズお嬢様のことです。 最近彼女の様子がどこかおかしい気がするのです……何か悩んでいるような素振りを見せる時があります。 それが何なのか私には分かりませんでしたが、きっといつか話してくれると信じていましたので特に詮索することはしませんでした。
そんなある日のこと、突然ユリシーズお嬢様が私を呼び止めました。 そして真剣な面持ちでこう仰いました。「プリシラ、相談をいいかしら?」と。 私は一瞬戸惑いましたがすぐに答えます。「はい!もちろんです!」と。すると彼女は安心したような表情を見せられましたので私も安心しました。 しかしその後すぐに表情を暗くされてしまわれたのです。一体どうされたのでしょうか..........?心配になって聞いてみましたが、そんな時でした……彼女がこんなことを言い出したのです。 「私、アナステシアス殿下に告白されたらどうしよう?」 と仰ったのです。 私は驚きのあまり固まってしまいましたが、すぐに我に返ります。そして恐る恐る尋ねてみることにしました。 「あの............お嬢様は、アナステシアス殿下のことをどう思っておられるのですか……?」 そう尋ねると彼女は困ったような表情を浮かべつつも答えてくれました。「嫌いじゃないけど……恋愛対象として見たことはないわね」と。 それを聞いてホッとしている自分に気付きました……どうしてでしょう?自分でもよく分かりませんでした。
それからしばらくして、ユリシーズお嬢様からアナステシアス殿下との食事の時のための髪飾りを買いに街に行こうと提案がありました。私は喜んで承諾しましたが、同時に不安にもなってきました……というのもアナステシアス王子のユリシーズお嬢様に対する態度を見ているとどうも好意があるように感じられたからです。 もし本当に彼がお嬢様に想いを寄せているのなら、私はどうすればいいのでしょうか.........? そんなことを考えているうちに当日を迎えてしまいました。 待ち合わせ場所に着くとすでにユリシーズお嬢様は待っておられましたので、慌てて駆け寄りますと笑顔で迎えてくださったのです。 そして二人でお店に入り注文を済ませると、早速本題に入りました。 まず最初に口を開いたのはやはりユリシーズお嬢様でした。 「プリシラさんはアナステシアス殿下のことどう思ってるのかしら?」 突然のことで戸惑いましたが正直に答えることにしました。「そうですね..........素敵な方だとは思いますが、恋愛対象ではないですね」と正直に述べると彼女もまたホッとした表情をされておられました。 (やっぱりユリシーズ様はアナステシアス王子のことを............?)そう思うとチクリと胸が痛みました……何故でしょうか?不思議に思っていましたが今はそれよりも大事なことがあると思い直します。
そしてその後は他愛もない話をしながら、お嬢様に似合う色の髪飾りを選んでいました。 「ユリシーズお嬢様の髪色は艶のある黒色なので、やはり濃い色が似合いますね。 前回のワインレッド色のドレスも、とてもお似合いでしたよ」
と感想を言うと彼女は嬉しそうに微笑んでくれました。 あれこれ悩んだ結果、前回と同じワインレッドの薔薇の髪飾りに決まりました。 その後、私たちは買い物を終えて帰路につきました。その道中でユリシーズお嬢様がこんなことを言い出したのです。
「ねえプリシラ……息抜きに甘いものでも食べに行きましょうか?あなた、スイーツ好きでしょう?」と仰ったのです。 私は喜んで承諾しました……ユリシーズお嬢様からお誘いを受けるのはとても嬉しいです。
嬉しさのあまり舞い上がってしまいましたが、それを悟られないように冷静を装いつつ返事をします。すると彼女はさらにこう言ってくださったのです。「良かった!じゃあ早速行きましょう!」と。そして私の手を取り歩き出しました……その時でした。突然背後から声をかけられました。 驚いて振り返るとそこにはアレクシオ殿下の姿が……どうやら私たちを追いかけてきたようです。 彼は息を切らしながら駆け寄ってくると、こう仰いました。「待ってくれ!ユリシーズ、プリシラさん……話があるんだ!」 そう言われて私たちは立ち止まると、彼の方を向いて顔を見合わせました。しかし一体どのような話なのでしょうか……? すると彼は意を決したかのように口を開きます。そして衝撃的なことを告げたのです。 それは私とユリシーズお嬢様が恋人同士であるという噂が流れており、それが真実かどうか確かめに来たということでした…… 私は驚きのあまり言葉を失ってしまいましたが、ユリシーズお嬢様はすぐに反論されました。「いえ、そんなことないわ。私たちはあくまで家族で友人です。」その言葉を聞き、ホッとしましたが同時に寂しくも感じてしまいました。 それからしばらく沈黙が続いた後、アレクシオ殿下が口を開きました。「そっか……それならいいんだ!変なことを聞いてすまなかったね」と言って去っていかれました。 その後私たちは無言のまま帰路につきます。しかしユリシーズお嬢様はどこか上の空といった様子でした……一体どうしたというのでしょうか?心配になった私は彼女に声をかけました。すると彼女はハッとした様子を見せた後、すぐに笑顔を浮かべて答えてくれましたがやはりどこか無理をしているように感じられました。
そしてその後は特に変わった様子もなく平穏な日々が続いていきました。しかしそんなある日のことです、ユリシーズお嬢様は突然こんなことを言い出したのです。「ねえプリシラさん........私やっぱり、アナステシアス殿下のこと、嫌いにはなれそうにないわ」と。その言葉を聞いた瞬間、心臓が大きく跳ね上がるのを感じました。 私は動揺を隠すために必死で取り繕いましたが上手くいった気がしません……それでもなんとか平静を装いつつ返事をすることができました。 それからもしばらく会話が続いたのですが、その間ずっと
私は硬直していました……ユリシーズお嬢様の話が全く耳に入ってこないのです。 「ねえプリシラさん、大丈夫?さっきからボーッとしてるみたいだけど..........」そう声をかけられて初めてハッとしました。どうやら考え事をしていたようです。慌てて謝ると彼女は不思議そうな顔をされましたがそれ以上追及してくることはありませんでしたので一安心です。その後も他愛もない会話を続けていましたが、どうしても意識してしまっていたようで上手く会話を続けることができませんでした。そんな中ふと思いついたことがありましたので思い切って聞いてみることにしました。
「そういえばユリシーズお嬢様、最近何か悩み事でもあるのですか?」 そう尋ねると彼女は驚いたような表情を浮かべましたがすぐに笑顔に戻ってこう言いました。「あら?どうしてそう思うのかしら?」 私は素直に思っていることを口にしました。すると彼女は少し考える素振りを見せた後こう答えてくれました。「そうね……確かに悩んでいることはあるのだけれど……」 それを聞いて不安になりましたが、それ以上は話してくれませんでしたのでこれ以上追求することはやめておくことにしました。そしてその日は解散となり、それぞれ帰路につきました。帰り道の最中ずっとユリシーズお嬢様のことを考えていました……一体どうされたのでしょうか?心配になりましたが、私が考えても仕方ないと思い直し家に帰ることにしました。 「おかえりなさいませお嬢様!!メイド長!」 家に着くとメイドたちが出迎えてくれましたので軽く挨拶を済ませた後自室に入りました。ベッドに横になり天井を見上げていると不意に彼女の顔が浮かんできます……ユリシーズお嬢様のことが気になって仕方ありませんでした。結局その日はなかなか寝付けず悶々とした時間を過ごしてしまいました。翌日になっても彼女のことを考えるばかりで何も手につきません。そんな状態が続いたある日のこと、ユリシーズお嬢様からお茶の誘いを受けましたので喜んで承諾いたしました。 「プリシラ、最近元気がないようだけど大丈夫……?」心配そうな顔で聞いてこられるお嬢様に私は慌てて否定します。「いえ!そんなことはないですよ!」と答えると彼女はほっとした様子を見せました。しかしそれでもまだ不安が残っているようでしたので私は正直に話すことにしました。 ユリシーズ様のことが気になっているということを……すると彼女は驚いたような表情を見せましたがその後すぐに笑顔になりました。そしてこう言ってくださいました。「私もプリシラのこと大好きよ」その言葉を聞いた瞬間胸が高鳴りました……それと同時に、彼女の仰る「好き」は家族として、そして友人としての意味だということを理解しました。それでも私は嬉しかったのです……彼女が私のことを好きだと言ってくださったことが何よりも幸せでしたから。 それからというもの、私たちは以前よりもさらに親密になりました。お互いの部屋を行き来する機会も増え、二人でお茶をしたりお話をしたりする機会が増えましたのでとても充実した時間を過ごしています。
そんなある日のこと、ユリシーズお嬢様がこんなことを言い出したのです。「プリシラさん、私ね最近ある人のことを好きになってしまったの……」 それを聞いてドキッとしましたが平静を装って尋ねます。「それはどなたのことでしょうか?」 「それは言えないの。でも、その人のことを思うと、胸が締め付けられるような気持ちになるの。」 それを聞いて思わず口元が緩みそうになるのをなんとか抑え込みます。「そうなんですね……」と答えると彼女は続けてこう言いました。「私、どうすればいいのかな……?その人とは身分が違うし、何より....」 その言葉を聞いて私は思いました……これはきっと恋をしているんだと。そう思うと心が締め付けられるような痛みを感じましたが、同時に応援したいという気持ちも湧いてきました。ですから私は彼女にこう伝えました。 「ユリシーズお嬢様なら大丈夫ですよ!きっと上手くいきますよ!」そう励ますと彼女は少し微笑んでくれました。
「明日はアナステシアス殿下との食事があるから、夕食は大丈夫よ。」 とユリシーズお嬢様が仰ったので私は少し残念に思いました。「承知致しました」と答えるものの心の中はモヤモヤしていました……結局その日はあまり眠れませんでした。翌日、いつものように身支度を整えて玄関へ向かうとちょうどユリシーズお嬢様も出てこられるところでした。
私たちは軽く挨拶をして、ユリシーズお嬢様は馬車に乗り込みます。「じゃあ、行ってくるわね」 「はい、お気をつけて行ってらっしゃいませ」 そう言って彼女を見送ると私は家に戻りました。 「プリシラメイド長、今日は一体どうしたというのですか?」メイドのジェーンにそう尋ねられてハッとしました。どうやら顔に出てしまっていたようです。慌てて表情を取り繕いながら答えます。 「いえ、何でもありませんよ」しかし彼女は納得していないようでした。なので仕方なく話すことにしたのです。すると彼女は驚いたような表情をされましたがすぐに笑顔になりました。そしてこう言われたんです。「それはきっと、恋をしているからですよ」 それを聞いて顔が熱くなるのを感じました。しかし同時に納得もしてしまいました。 「そうかもしれませんね……」私は素直に認めました。すると彼女はさらに続けます。「プリシラメイド長、あなたはユリシーズお嬢様の幸せを願わないのですか?」と問われてハッとしました。確かにその通りだと思ったのです……何故なら私もまたユリシーズお嬢様のことを心から愛しているのですから。そう思うと居ても立っても居られなくなりましたので、すぐに行動に移すことに決めました。
またユリシーズお嬢様のことを心から愛しているのですから。そう思うと居ても立っても居られなくなりましたので、すぐに行動に移すことに決めました。 翌日になり、ユリシーズお嬢様は朝からとても上機嫌でした。何かいいことでもあったのでしょうか?私は気になって尋ねてみることにしました。 「ユリシーズお嬢様、何かいいことでもあったのですか?」すると彼女は嬉しそうに答えてくださいます。「実はね、アナステシアス殿下に告白されたのよ!」 それを聞いて驚きましたが同時に嬉しく思いました……ついに想いが通じたのですね! しかしそれと同時に寂しさも覚えました……何故なら彼女が幸せになるということは私の恋が終わりを告げることを意味しているからです。それでも彼女の幸せを心から祝福したいという気持ちがありましたので笑顔でこう言いました。 「おめでとうございますユリシーズお嬢様!これで晴れて恋人同士ですね!」すると彼女は恥ずかしそうに笑いながらこう答えてくださいました。「ありがとうプリシラさん……でも、まだ恋人になったわけじゃないのよ?」 それを聞いて思わず笑ってしまいます。「ふふっ、そうですね」と返すと彼女もまた笑い出しました。そして私たちはしばらくの間一緒に過ごしました。
次の日になるとユリシーズお嬢様はいつもと同じ時間に起きてきましたが、どこか様子が違うように感じられました。何か考え事をしているようでした。 「ユリシーズお嬢様、おはようございます」
私が声をかけると彼女はハッとした様子でこちらを向き、「おはよう」と言ってくれました。しかしやはりどこか元気がない様子です……何かあったのでしょうか?心配になりましたが無理に聞き出すことはせずに見守ることにしました。すると彼女は突然立ち上がり部屋を出ていこうとしたので慌てて引き止めます。 「ユリシーズお嬢様、どちらへ行かれるのですか?」 そう尋ねると彼女はこう答えてくださいました。「少し散歩してくるだけよ」それを聞いて安心しました。どうやら体調が悪いわけではないようです。
ほっと胸を撫で下ろしつつ彼女を送り出しました。 しばらくしてユリシーズお嬢様が戻ってきましたがその表情は明るくありませんでした……やはり何かあったのでしょうか?不安になりつつも聞き出せずにいると、彼女は突然こんなことを言い出したのです。「ねえプリシラさん、もし私がアナステシアス殿下のことを好きじゃなかったらどう思うかしら?」 その言葉を聞いて驚きました……まさか彼女がそんなことを言うとは思ってもみなかったからです。
しかしすぐに平静を装いながら答えます。 「そうですね...どんな結果であろうと、私はユリシーズお嬢様の幸せを願っておりますよ」そう励ましますと彼女は少し安心した様子を見せました。 「ありがとうプリシラさん……」 その日の夜、ユリシーズお嬢様から相談を受けました。その内容はアナステシアス殿下に対する想いについてでした。どうやら自分の気持ちがよくわからなくなってしまったようです。私は彼女の話を聞きながら真剣に考え込みます……そしてある一つの結論に至りました。それは、ユリシーズお嬢様には心から愛している人がいるということなのです。だから彼女も悩んでいるのでしょう……ならば私がすべきことはただ一つです。彼女を、ただ応援することだと思いましたのでそう伝えました。
すると彼女は嬉しそうに微笑んでくれたのです。 「プリシラさん……そうね、私頑張るわね!」と力強く宣言してくれました。そんな彼女を見て私も嬉しくなりました。 彼女の幸せを願う気持ちは変わりません。だから私は笑顔でこう言いました。「はい、応援していますよ」 翌日からユリシーズお嬢様は積極的にアプローチを始めました。今まで以上に積極的になったことでアナステシアス殿下との関係も進展していき、やがて二人は恋人同士になりました。その時の喜びといったら言葉ではとても言い表せないほどでした。本当によかったと思います。
私はこれからもユリシーズお嬢様の幸せを見守ろうと決めたのでした。
「プリシラメイド長、何かありましたか?」 「え、どうしてですか?」 ジェーンが私の顔を覗き込んできましたので驚いてしまいました。「いえ、最近元気がないように見えたもので……」 そう言われてドキッとしましたがすぐに平静を装います。 しかし彼女にはお見通しだったようでした……さすがですね。 「実はユリシーズお嬢様のことが心配でして……」 私は正直に打ち明けることにしました。すると彼女は優しく微笑んでくれました。 「プリシラメイド長は本当にユリシーズお嬢様のことを大切に思っているのですね」 そう言われると少し照れくさい気持ちになりますね……でも事実ですから仕方ありませんね。
「はい、もちろんです」と答えると彼女もまた微笑んでくれました。 それからしばらく雑談をしている内にすっかり時間が経ちましたので仕事に戻ることにしました。部屋を出る際にもう一度お礼を言うと彼女は笑顔で応えてくれました。本当に素敵な方ですね……これからも仲良くしていきたいと思います。 ユリシーズお嬢様の恋が実ってから数ヶ月が経過しましたが未だに不安が消えません……アナステシアス殿下は誠実な方ですが、それでも心配になってしまうものです……そんなことを考えているうちにいつの間にか時間が過ぎていました.........いけない!早く食事のご用意をしなくては。
そして私は急いで厨房へと向かうのでした。 「プリシラメイド長、ユリシーズお嬢様からお手紙ですよ」とジェーンに言われます。彼女はいつも私をサポートしてくれる心強い存在です。そんな彼女に感謝しつつ手紙を受け取りました。中身はなんとアナステシアス殿下と一緒に遊びに行かないかというお誘いの手紙だったのです!早速返事を書き上げて彼女に渡します。 その後すぐに返事が届きました............どうやらユリシーズお嬢様も喜んでくれたようです。とても嬉しく思いますね!
それから数日後、私は王都へと向かいました。待ち合わせの場所に着くとすでにユリシーズお嬢様とアナステシアス殿下が待っていましたので急いで駆け寄ります。 「遅くなってしまい申し訳ありませんでした……」と言うと二人は笑顔で許してくれました。そして早速みんなで遊びに行くことにしました。まずはカフェに入ってお茶をすることにします。そこで色々なお話をしました……主にお二人の馴れ初めについてお聞きすることが多かったのですがとても素敵なお話ばかりでした。
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