束の間の休息

 たまにの休日。

 束縛からの解放。

 友人との約束。


 僕の彼女は束縛が激しい。

 ちょっとやそっとの飲み会さえも許してくれない彼女。

 そんな彼女が、僕は少し苦手なのかもしれない。

 無論それだけで彼女を嫌いになることはないのだけれど、なんだかストレスが溜まっていたようだ。


 久しぶりに高校時代の友人と食事に行って、それを実感した。

 友人とは楽しい話をしなければいけないとはわかっているのに、出てくる話題全てが彼女の愚痴だ。


「それ犯罪レベルだろ」


 友人は、僕と彼女の関係性を冷静に分析した。


「かなり束縛してくるなとは思ってるけど、僕じゃないと彼女支える人いないだろうし」

「沼ってんなぁ、程々にしとけよ」


 心配してくれているのは分かるけれど、

 僕は壊れそうだけれど、

 それよりも彼女を大事にしなければいけないという使命感に襲われる。


 それに、僕がいないときっと彼女は壊れてしまう。

 彼女の処理が僕にはできないから、壊さないようにしなければならない。


「ったく、別にお前がいいならいいけどさ、休憩はちゃんと取れよ。お前が倒れたら気が気でならんから」


 友人との時間は一瞬であった。

 彼女と過ごす10分間よりも、友人と過ごす3時間の方が短かった。

 もっと彼といたいけれど、やはり迷惑な気がしてたまらない。




 重い足を引きずりながら帰宅した。


「ただいま」

「おかえり、ねぇなんでそんなに長かったの?」


 家に帰りたくなかったからだよ。

 反射で出そうになった言葉をぐっと抑える。

 そして、代わりの言葉を添える。


「君の話をしすぎたんだよ」


 自慢ではなく相談でもなく、愚痴だけれども。


「えー嬉しい! ねね、そういえばわたしの好きなところ最近聞いてないな、教えてよ」


 またしんどい日々が始まりそうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る