第2話

翌日出勤すると、さっそく課長に呼ばれた。

昨夜の事でクレームが来たんだろう、たぶん。

叱責されると思った私は課長が何か言う前に言った。

「電話をしたんです、あれから直ぐに。でも、誰も出なくて」

「そうか、それで直接行ってくれたんだな。そうかそうか。ご苦労さんだったな。さっき先方からわざわざお礼の電話があったよ。君が行ってソフトの不具合個所を見つけてくれなかったら大損害だったそうだ。しかも向こうさんのソフトをいじって応急措置までしたそうじゃないか。あれが一晩動かなかったら製造部長の首が飛んだとさ。うちのアフターフォローは凄いと感心してたよ。君の事も腕のいいエンジニアだと褒めてたぞ」

「はっ? 何のことです?」

「とぼけなくていい。顧客のソフトに触るのは本来禁止行為だが、これは客からの依頼と同じだ。実際相手は喜んでる。問題はない」

「は、はぁ」

「この件は、俺から部長に報告しとくからな。帰社後にわざわざ客先迄行ったことも含めてな」

「…」

どういう事だ?

誰かが私の代わりに行った? そして私の名前を使い、私が行ったことにした?

そんな事があるか?

課長は大きな勘違いをしている。

私は、それが判明する時が怖いと思ったが、どうしたらいいか分からない。

私のふりをした誰かが、何故かは分からないが嘘をついて私だと名乗ったのであって、私が意図的に嘘をついたわけではないと自分に言い聞かせ、このまま暫く様子を見る事にした。

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