第6話「謎の男との戦い」

閻魔大王えんまだいおう様、人間の女にうつつを抜かして、子まで作るとは地獄の王たる貴方が、一体、何を愚かなことを」


 黒いローブの男は、クククと笑う。


「お前にとやかく、言われる筋合いはない……一体、お前は何なのだ。地獄の者ではないのは、明白。さっさと、ここから立ち去れ!」


「お母しゃん、怖いよー」


「大丈夫よ。輪廻りんね……お父さんとお母さんが付いているからね」



 吉乃よしのは輪廻を抱きしめながら、不安そうに炎真えんまの様子を見守っている。



「フフフ、そう言う訳には行きませんよ……否、行かねんだよォ!閻魔王ッ!」


 男は、突然豹変し粗暴な言葉遣いになった。

 男はマントを脱ぎ去り、醜悪な姿をさらけだした。


 男の姿は、蛇と虎を合成したような姿だった。


「お前は妖怪か?お前のような者が我に何の用がある」


「俺は、お前に地獄行きにされた妖怪の息子だ!貴様だけは許さねえ」

「うん?お前の顔はどこかで……」


 閻魔は思考を巡らせた。

 彼は、裁きの場で二年前に裁いて地獄行きにした妖怪のことを思い出した。



 しかし、それはそれは性根の醜悪な妖怪で閻魔までも騙そうとして最後まで油断ならなかった者だった。


「それは、お前の父が大罪を犯した罪人だったからだ。我は、その裁きをしたまで」


「黙れ、黙れえええッッ!!!!ぶっ殺してやる」


 妖怪は、それを聴いてカッと頭に血が上り、顔を真っ赤にして襲いかかって来た。


「そのふざけた顔を切り刻んでやる!!!」


「ほう?貴様ごときが我に傷をつけると」


 閻魔はニヤッと、薄く笑うと吉乃や輪廻から、妖怪を遠ざけるように攻撃を避けていく。


 風に舞う、木の葉のように攻撃を流し避ける閻魔、鋭い爪を繰り出す妖怪。妖怪は一度も攻撃出来ず、閻魔は拳と蹴りで連撃を食らわせる。


「ちっ、ちくしょう!埒が明かねえ! こうなったら……」



 妖怪は、ニヤリと笑うと閻魔の前からふっと消えた。

 


 その瞬間、突如現れた妖怪から、輪廻をとっさに庇った吉乃と、輪廻の悲鳴と泣き声が公園に響き渡った。


「輪廻!キャアアッッ!!!」


「うわああ! おっ、お母しゃーん!!!」


 閻魔が振り向くとそこには、遠方に妖怪に爪で切り裂かれ、倒れ掛かっている最愛の妻の姿が、閻魔の目に映った。


「吉乃ぉおおおッッ!!!」


 閻魔は顔面蒼白になり、吉乃の元へ瞬間移動をした。

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焔閻魔帳恋物語 夢月みつき @ca8000k

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