※第3話「幸せな時間(とき)」

 ※軽い性的描写があります。






 カーテンの隙間から、暖かく眩しい陽光ようこうが漏れ、窓の外から雀の鳴き声が聴こえて来る。

 朝、炎真えんま吉乃よしのの部屋のベッドの中で目を覚ました。

 吉乃は両親を亡くした後、この家を継いだらしく。現在、一人暮らしだった。

 温もりと感触に気がついて彼がふと、胸のあたりを見ると吉乃がでたくなるような寝顔で炎真の胸に頬を寄せて眠っていた。



 二人に掛けられた一枚の毛布は、炎真と吉乃の素肌を隠していた。

 彼女の甘い香りが、炎真の鼻先を撫でる。

 人とは、このように温かく守ってやりたい存在だったのかと彼は、改めて想う。

 地獄を統べる王のおのれと一人の人間の女性が一晩、求め合い愛し合ったのだ。


 昨夜の愛おしく艶っぽい、吉乃の姿が思い出される。

 彼は、頬を紅潮こうちょうさせるとフッと微笑み、吉乃の前髪を指で払い、そこに口づけを落とす。



 すると、彼女が目を覚まし、茶の瞳に炎真の姿を映した。

「あっ、あの…ほむらさんっ。私」

 吉乃の脳裏に自分を優しく抱く、炎真の姿が浮かんだ。



 そして、炎真と自分の姿を改めて、確認して。まるで、りんごのように顔を真っ赤にして耳まで染めている彼女を見て、炎真は可愛くて堪らないと言ったように、くすくすと笑う。


「――炎真で良い、俺も吉乃と呼びたい」

 ――地獄の方も気にならない訳ではない。しかし今はこのまま、一人の男として吉乃を愛したい――


 炎真は、柔らかく笑い。吉乃の鎖骨に口づけし、しゅを散らす。

 彼女のひたいに自分の額をくっつけるとそのまま、唇にも口づけを落とした。

 炎真は吉乃の腰に手を回し、そのしなやかで長い指が腰から前の方へとなぞって行く。


 トクンと吉乃の心臓が跳ねる。

「あっ……炎真、ダメ今は私、朝食作らなきゃ」

「良い、俺が作るから君は横になっていろ。まだ、痛いだろう?腰」

「あっ…うん、ありがとう。私、シャワー浴びてくるね」


 吉乃は、喜びと恥ずかしさに頬を染めてパステルピンクのバスローブを纏うと、そそくさとお風呂場に行ってしまった。


 炎真はその後ろ姿を見ながら微笑み、乱れた前髪をかき上げ。白のTシャツとジーンズを着て、身支度を整えた後、朝食を作る為に台所へと向かった。




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