第2話「夜道での遭遇」

 ある日の事、夜に吉乃よしのはスーパーのアルバイトで遅くなり、家路を急いでいた。

 すると、一人の中肉中背の男がスーパーの辺りから、吉乃を尾行し、その姿を閻魔えんまは仕事の合間に携帯水鏡で観ていた。



 尾行されていることを気づいた吉乃は、足早に歩きだす。

 男もそれを執拗に追った。

 住宅街の夜道に吉乃と男の足音が響いている。



「嫌ッ!たすけて」

 男の魔の手が彼女に迫ろうとした時、男の腕が何者かによってひねり上げられる。



 それは、あの日からいつも、花を買いに来てくれる焔炎真ほむらえんまだった。

 炎真は、吉乃を後ろ手で守りながら背中の後ろに隠した。

「焔さんっ!」



 炎真の助けにほっと胸をなでおろす。

「大丈夫ですか?吉乃さん」

「はいっ」



 街灯の明かりで、炎真達と男が照らし出される。

 男は、黒のキャップとパーカーに黒のスラックス、闇に溶け込めるようにか。

 黒づくめの服装をしていた。



「なんだ、てめえ!俺の吉乃ちゃんに馴れ馴れしくしやがってえ—―!殺してやる!!」

 この男は、ずっと吉乃に付きまとっていたストーカーだった。

 男は目を血走らせ、醜い顔でわなわなと震えながら隠し持っていたサバイバルナイフで炎真を刺そうと向かって来た。


 しかし、後ろには吉乃がいる。下手に避ければ、彼女に怪我をさせてしまうだろう。

「チッ、愚か者が!」



 炎真は舌打ちをすると、男に向かって行き、手刀しゅとうでナイフを叩き落として男の顎を蹴り上げた。

「ギャッ!」

 男は、短く叫ぶと勢い良く地面に叩きつけられる。


「なんとも、卑劣なり。貴様、そんなに地獄を見たいか……?」

 炎真の双方の赤い瞳が光り、男を金縛り状態にする。

 彼は憤怒の表情をして、冷たい視線で男を見降ろし、右足で腹を踏みつける。


「ひっ、ああっっ!?」


 男はひゅっと息を呑み、炎真の恐ろしさと金縛りで、抵抗することも出来ずに顔面蒼白で涙を流して、口をパクパクとさせている。


「焔さんっ!」


 その時、吉乃が炎真のいつもと違う雰囲気に驚いて、彼の腕を掴んで、引っ張った。

「駄目ですよ!もう、この人動けないじゃないですか。私、110番に通報しました。あとは、警察に任せましょう!」


 炎真は、吉乃の声でハッと我に返った。

 男の腹から、足を退ける。

「確かにそうですね。貴女が、このような目に遭わされてつい、怒りが抑えられなくなって……」



 彼女を振り返った炎真は、いつもの優しい彼の表情に戻っていた。

 ほっと胸を撫でおろして、吉乃は炎真に思わず、抱き着く。


「――吉乃さん?どうしましたか?震えていますよ」

 吉乃を抱きとめ、心配そうに背中をさする。



 吉乃は、まつ毛の長い涙の溜まった瞳で、炎真を仰ぎ見ている。

「怖かった!でも、今は焔さんがいなくなるのが何よりも怖いです。あのまま、あの人に何かされたらって……」

 その瞬間、炎真は吉乃を引き寄せて、可憐な花びらのような唇を奪っていた。



 抱きしめ合う二人、そしてしばらく唇を重ね合い。離す頃には、警官が現場に到着していた。

 男は動けない体を引きずられながら警官に連行されて行った。

 男は、震えながら警察官にしきりに訴える「あいつは悪魔だ」と。



 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


 今回から、保険でセルフレイティングの

 暴力描写あり作品と 性的表現あり作品を付けました。


 この先の展開によっては、もしかしたら、残酷表現も付ける、かもしれません。

 その時は、よろしくお願いいたします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る