大学生~社会人3年目

私立大のに進学し、基礎ゼミではエンターという新入生のサポートをする二、三回生の先輩が男性二人女性一人いました。一回生は一人ずつ自己紹介をさせられ、二十人のうち三分の二が人見知りという言葉を発していましたが、ほとんどの男は変なベストを着て、女子は太いベルトを巻いていました。


エンター、新入生含めほぼ全員が陽キャの頭角を現した頃には馴染めないことを確信していて、貴重な黒髪メガネ男の三人と肩を寄せ合っていました。後々エンターの女性が、変なベスト新入生男の二人と関係を持ったことが発覚し、酒池肉林ゼミと周囲から呼ばれるようになりました。言いえて妙です。


一回生の男二人とエンター女はゼミには来なくなりましたが、酒池肉林ゼミはカオスな雰囲気に包まれてとんでもない置き土産をされたものでした。ちなみにメガネたちと陽キャごっこと称して三条を歩いていると、男のうちの一人とエンター女性が腕組んで歩いているのを見てもはや尊敬しました。


大学で改善できなかったコミュ障のおかげで就活はどん詰まりでしたが、酒池肉林ゼミをひた隠し、有名大学のパッケージだけで勝負を挑み続けて、何とか内定をもらいました。しかし、内定をもらった会社に過剰に恩義を感じ、上司の言うことは絶対という人生のどこで習ったかわからない価値観を醸成しました。


大学時代の数少ない友人は全国に散り散りになりました。東京、大阪、広島、愛知。みんな大企業に就職したのでもっと地方に飛ばされるのかと思っていましたが、各地方を代表する地域に配属となりました。僕だけ、滋賀に留まりました。滋賀に配属を希望する人なんて誰もいないからですね。


三年目になると初めて直属の後輩ができました。高校以来、部活に入っておらず、サークルも非常に上下関係が緩いところだったので、本格的に後輩ができるのは初めてでした。僕の後輩に対する関わり方は課長の機嫌を損ないました。「大学生じゃないんだから」「職場では馴れ合いでは利益が出ない」


 僕は課長に後輩への指導の仕方を教えてもらいました。課長が僕へ指導するのと同じように接するようにとの方針でした。なので①まず自分がやってみたあとに実際やらせてみること、②ミスした原因と改善を提示すること、③できたら褒めることを実施することにしました。課長もOKと言ってくださいました。


後輩への指導は全くうまくいきませんでした。後輩はプライドが高くてまず自分でやりたがり、ミスを指摘したら不貞腐れて、褒めたら調子に乗って同期に自慢しまくって同期から嫌われると言ったことで、すべてが裏目になりました。課長から褒めるのを禁止され、ミスに目を向けさせることと言われました。


上司の指示は絶対です。僕はその日から褒めることを一切せず、ひたすら後輩のミスした原因を提示しました。後輩は謙虚になるどころか不貞腐れることが増していきました。後輩は課長に僕への文句を言ったそうで、それが課長から僕に回ってきました。「指導の仕方が下手だ」と言っていたそうです。


課長は「厳しくするのもダメではないけど、もっと良いところに目を向けてやらないと」と僕に言いました。ついこの間言っていたことと真逆です。しかし課長の考えはアップデートされたと理解し、僕は謝罪して早期に指導方法を改善しますと伝えました。以降、僕は後輩をとにかく褒めまくりました。


しかし後輩は褒められたことを都合よく解釈して同期に自慢します。今度は後輩の同期から課長に「ウツ彦が無闇に褒め過ぎる」と言ったそうです。また僕は課長に指導されてしまいました。課長は「褒め過ぎたら調子に乗るからミスしたことを認めさせること」と言いました。「は?」です。

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