第22話 21.2023年 3月
世界中に蔓延した殺人ウィルスは、いつの間にか日常化していた。政府は殺人ウィルスをインフルエンザと同等の扱いとし、マスク着用義務の緩和や、外出制限の廃止などを決め、社会はウィルス蔓延前の生活に戻り始めた。
そんな中、僕はリモート面接で完結する会社をいくつか受けた。殺人ウィルスが蔓延し出してすぐに自宅に籠ったので、もう三年も家から出ていない。そんな僕には、まだ人混みの中へ出かける勇気はなかった。オンラインでの生活に慣れきってしまった僕にとって、オフラインで人と会うということが億劫に感じられた。だから僕は、在宅でもできる仕事を探した。
在宅勤務の求人は、意外と多い。しかし、就職先はなかなか決まらなかった。オンラインでの仕事とはいえ、たまには出社をしなければならないこともある。全く人と関わらないわけではないのだ。面接を受けた企業からは、僕の三年間についてがウィークポイントとみられているようだった。あまりに徹底した生活ぶりは、対人関係に難ありと捉えられ、不採用となる理由になるらしかった。
僕は、このままではいけないと思っていた。なんとか外に出なければ。対人関係に問題などないのだと証明しなくては。
だけど、どうしても外に出ることができない。何度試しても、僕の足は玄関ですくんでしまう。いつの間にか、僕は本当に引きこもりになってしまっていた。
そうなると僕は、自己嫌悪からまた塞ぎ込んでしまった。焦りからインターネットで求人を探すものの、いつの間にか現実逃避のようにネットサーフィンを始める。それはいつしか、デジタル世界の中に彼女の痕跡を探すことへと移行していく。僕は、彼女になど未練はないと思いながらも、彼女の痕跡を探さずにはいられなくなっていた。
僕の様子見のために、しばらく一緒に生活をしていた母は、青い顔をしてパソコンに向かう僕を見て、ため息をついた。少しインターネットから離れて、外の世界に触れなさい。母にそう言われて、僕はパソコンとスマホを取り上げられた。
確かに、ずっと部屋にいるだけではダメだと思っている。いい加減に前に進まなければならないとわかってはいた。しかし、やはり怖いものは怖かった。
力の入らない足で、玄関から一歩外へ出る。久しく太陽の光を浴びていない僕にとって、久しぶりに浴びる日光が痛くて辛く感じられた。肌が焼けるように熱く感じる。思わず腕をさすった。腕には赤い斑点が無数に出ていた。
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