第13話 12.2021年 10月
爆発的な殺人ウィルスの蔓延は、十月になると突如として収束を始めた。しかし、ニュースを見る限りでは、緊急事態宣言の効果を謳う専門家はおらず、ほとんどの専門家がウィルスの収束原因は不明としていた。さらには、またすぐにウィルス蔓延は起こると、警鐘を鳴らす者ばかりだった。
ウィルス根絶を目指すためには、緊急事態宣言を解除する前に、収束の要因を突き止め、今後に生かすべきだろうという多くの意見を退け、経済活動の回復と活性化を促進したい政府は緊急事態宣言を解除。さらには、娯楽や飲食に関する全ての規制を解除し、殺人ウィルスに侵される前の経済活動に戻すことを発表した。
以前から、緊急事態宣言に対する抑圧疲れと称して、規制を守れない人々がいたが、全面解除の一報を受けた人々の動きを報じるニュースを見るに、専門家でない僕でも危惧したくなるほどに、人々の動きは活発だった。
そんな世間の波に乗るようにして、彼女も出掛ける予定が増えたのか、この頃はあまりオンラインゲーム内でデートができなくなっている。
これまで、毎日のようにオンライン上で会話をしていたのに、気がつけば、最近はあまり彼女の声を聞けていなかった。週に一度繋がれば良い方かもしれない。
せっかく繋がっても、僕は寂しさのあまり、なかなか会話ができていない事をつい愚痴のように彼女に言い募る。
緊急事態宣言の全面解除により、アルバイトができるようになったので、なるべくお金を稼ぎたいのだと彼女に言われて仕舞えば、僕は黙るしかない。
アルバイトを再開したらしい彼女は、本当に忙しそうで、あまり僕に会いたいと言って来なくなった。
僕としては、また殺人ウィルスが蔓延するであろうと予想をしているので、もうしばらくは家から出ない生活を続けるつもりでいる。そのため、彼女からのお誘いがあると、結果として断らざるを得ず、彼女を落胆させるとともに、自身もひどく落ち込む羽目になるため、誘われないに越したことはないのだが、それはそれで、寂しいのである。
何とかして彼女の気を引きたかった僕は、サークルの仲間達に、どうすれば良いかと相談を持ちかけた。実は、未だ彼女へのサークル勧誘も果たせていない。
僕を含め、『eスポーツ研究会』の面々は、恋愛に不慣れなためか、なかなかいいアイディアが浮かばないでいた。それどころか、仲間たちは、どこか彼女の話題を避けているようだった。
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