第7話 6.2020年 10月
バイト三昧の夏休みが開けて、生活の中心を大学生活へと戻す。サークルの仲間も、ようやく生活リズムが戻ってきたようで、十月になり、サークル活動が再開された。もちろん僕は、学校へは行かず、授業もサークルもオンライン参加だ。
ちょうどその頃、巷では、殺人ウィルスが第二波となる猛威を奮い始めたと、ニュースが騒がしくなった。ニュースでは、不要不急の外出を控え、感染予防対策を徹底するよう、毎日のように呼び掛けている。しかし、僕はそれを目にしながら首を捻るしかなかった。
だって、そうだろう。政府は、経済を優先させるために支援金をバラマキ、マスコミはそれを煽り、結果、人々が大量に出歩いたのだ。感染が拡大することなど、目に見えていたではないか。それなのに、感染者が増大してから、注意喚起などしたところで、間抜けなことをしているようにしか、僕にはみえなかった。
マスコミや政府に呆れていた頃、サークル活動の一時休止という連絡がメールで届いた。どうやら、夏休みに、支援金を利用して遠出をした仲間たちのほとんどが殺人ウィルスに感染したらしい。軽症、重症、様々な症状が仲間たちに出ているようだった。
それ見たことか。僕はそんな気持ちだった。オンラインでサークル活動に参加している僕には、全く関係ない。家にいれば、殺人ウィルスなど、なんの脅威でもない。なぜ、みんなそんなことが分からないのだろうか。
そうは言っても、感染してしまったものは仕方が無い。みんなの無事の回復を願いながら、僕は、ソロプレイヤーと化して、オンラインゲームを楽しんでいた。
ソロプレイヤー活動を始めて、3日目。知らないアカウントからメッセージが来た。どうやら、ゲーム内で暴れ回る僕が気になったようだ。
ゲーム内で暫く行動を共にし、言葉を交わすうち、互いに大学生で、しかも同じ大学に籍を置いている事を知った。
共通項を見出すたびに、僕らの距離は近づいていった。
いつの間にか、僕らは、毎日のように会話をするようになっていた。それは、もちろん、チャットやマイク越しというオンライン環境下での事だが、それでも、毎日コンタクトを取っているという状態は、やがて、僕の心に変化をもたらした。
僕は、オンライン上でしか付き合いのない、まだ顔も知らない彼女に、恋をした。
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