第42話 激しい死闘…開幕!!

 門の前が紫色の光に包まれていた。その光の向こう側ではワイヤレスイヤホンを装着したロバートが、手の中のリモコンをもてあそんでいる。その背後で、迷彩服の傭兵らが隊列を組む。上空には黒いヘリコプターが浮かび、寒々しい光を放っていた。


「秘密の通路で俺を出し抜いたつもりか?」


 ロバートが片方の口角をあげて冷ややかな笑みを浮かべる。


 物音を聞きつけ、レッドとジェイソンとアイクが家を飛び出した。


 「あいつら、どうしてこんなに早くここを探せたの?」


 アイクは驚きを隠せない。麗華と呂布も外に出てくる。読唇術でアイクの言葉を理解したロバートは、ニヤリと笑って手の中のリモコンを振ってみせた。軽くボタンを押すと、ピコンと音が鳴る。


 その直後。


 ピピピピ!


 ジェイソンの服のボタンが光り、音を発した。


 「クソッ! いつの間に追跡装置をつけやがった!」


 ジェイソンは、むしり取ったボタンを地面に投げつけ足で踏みつぶした。それを見たロバートは、フンと鼻で笑いジェイソンらに近づいてくる。


 「俺は欲しいものは必ず手に入れるのさ」

 

 呂布の前で足をとめ、冷ややかな笑顔を投げかけた。


 「まったく、誰も想像しなかっただろう。あの戦神呂布が、こんなかわいらしいお嬢さんになっちまうとはな。悪いことは言わん。おとなしく俺についてこい」


 「ご主人様を侮辱するな!」


 怒りを爆発させたレッドが、高々と跳躍し、ロバートに蹴りを繰り出す。


 ところが、レッドの足がロバートを包む紫色の光に触れた途端、靴のソール部分が切り落とされ、足の裏から血が吹き出した。幸い、間一髪のところで紫の光を避けたため、足が切り落とされることはなかった。


 皆が驚きレッドを取り囲んだ。


 「赤兎、骨は無事か?」


 「なんのこれしき。ご主人様、ご安心を」


 レッドが力強く答えた。


 ロバートが大きな口を開けて、わははと笑う。


 「抵抗してもムダだ! 上を見ろ!」


 言われるがまま皆が空を見あげる。誰かが円形の金属の装置を抱え、ヘリコプターから別荘を狙っている。金属の装置からまぶしい光が発射され、別荘全体がたちまち紫色の光に包まれた。


 「高性能レーザーの包囲網だ。ハエ1匹たりとも逃げることはできんぞ」


 ピコン。


 ロバートがリモコンを操作し、包囲網を縮めた瞬間、レッドのケガを目の当たりにしていた一同に緊張が走った。


 「みんな中に入って!」


 アイクの叫びを合図に皆が家に駆け込む。ドアをかたく閉じても、ロバートの声が聞こえてくる。


 「どこに隠れようとこの包囲網は避けられない。人はおろか、家さえも木っ端みじんにできるんだ。今から3分以内に投降しろ。さもなくば、容赦はせん!」


 ジェイソンは頭を抱え、自分を責めながら謝り続けている。呂布はじっと正面を見つめながらインプットした知識を総動員して対策を考え続けていた。レッドは死を覚悟したような顔つきで、呂布のかたわらにたたずんでいる。


 「1分経過だ。さあどうする?」


 ロバートの声が耳に届く。


 「2分たったぞ。あと1分だ」


 「こうなったのは私のせいなので、私が投降するふりをします。そのすきに、皆さんは逃げてください!」


 言うやいなやジェイソンはドアを開けようとした。


 「待て!!」


 大声で呂布がひきとめる。この時、呂布の脳内に不思議な感覚がわきあがっていたのだ。脳細胞のひとつひとつが電流の刺激で震えているような、かつて味わったことのない感覚に、呂布は思わず頭を包み込む。


 「レーザー、エネルギー、波長、干渉……」


 突然、呂布の眼光が鋭くなる。


 「分かったぞ! あのかぶとを持ってきてくれ!」


 呂布の様子を見ていたアイクは、すぐに事情を理解した。長い足をいかして大股で歩き、テーブルに置いてあった半分残ったヘッドギアを持ってきた。


 「はいこれ!」


 受け取った呂布がボタンを押すと、ピピピピと電波が発信される音がした。全員の顔に緊張が走った。


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