第12話 まさかの全国指名手配
アイクは腕を組むと、軽く首を横に振った。
「世の中には不思議なことがあるものね。残念だけど、今のところ解決策は思いつかないわ。とにかく、こうなった以上、お互いの身体を傷つけないように気をつけることね。魂が戻る時にポンコツになってちゃ困るでしょ?」
そこまで言って、アイクは呂布に疑問の目を向ける。
「ねぇ……。さっき、麗ちゃんの好きな色とフルーツを当てなかった?なんであなたが知ってるの?」
「知るか! だが一瞬、頭にいろいろなことが流れ込んできたんだ。俺も混乱してる」
呂布は頭をかきむしった。
「例えば?」
「ああ、この女が自分の身体を使って夜中に一人で…」
「やめなさいッ!」
麗華が顔を真っ赤にして慌ててとめに入ると、アイクはおかしそうに笑った。
「分かったから落ち着いて。とりあえずふたりの間に何が起きたのかは、だいたい理解できた」
「でもアイク、こんなの不公平です!この人には私の記憶があるのに、私にはこの人の記憶がないなんて……」
「今は焦っちゃダメ。頑張って原因を探ってみるから、アタシに任せといて」
不満そうに口をとがらす麗華の肩を優しくたたいたアイクは、呂布に笑顔を向け、たくましい身体を上から下まで眺め回す。
(この甲冑のイケメン、ほんとセクシーだわ。どうやって麗華の身体に入り込んだのかしら?)
呂布は、相変わらず三人をにらみつけていたが、少なからず現状は理解できた。
(この麗華という女と俺の魂が入れ替わったのか。だが、この女にも理由が分からないようだ……)
突然アイクが思い出したように叫び声をあげた。
「そうだ!麗ちゃんたち、テレビでニュースになってたんだった!」
「テレビに!?」
顔をあげた麗華は、困惑した表情をジェイソンに向ける。ジェイソンが急いでテレビのスイッチを入れた。
テレビ画面では、甲冑を着た大男が次々と警備員を跳ね飛ばしたあげく、スーツ姿の若い男の手を引いて会場から走り去っていくようすが映った防犯カメラの映像が繰り返し流れている。さらには、この大男が指名手配されたとも伝えていた。
〈本日、世界貿易ビルで開催されていた展示会で強盗事件が発生しました。犯人は北条グループの北条麗華さん(29)を人質に取って逃走中です。こちらに映っている男に心当たりのある方は、ただちに警察に通報してください……〉
麗華とジェイソンは驚きのあまり言葉を失った。
「呂布が指名手配されてるじゃない!しかも私が人質…?」
「麗ちゃん、呼び方を決めましょうよ。さすがに公の人の前で『呂布』のままじゃまずいでしょ?」
アイクが笑顔で提案すると、呂布がずいっと前に進み出た。
「俺は誰がなんと言おうが呂布だ」
麗華も負けじと前へ進み出る。
「あなたは正真正銘のバカですか?世間的には私が入っているこの身体が『呂布』ですから。あなたは今、北条麗華です」
麗華が深いため息をつく。
「あなたはしっかりと、私の役をこなしてくれないと困ります。私は『呂布』とは名乗れないので、元に戻るまではボディーガードの
麗華は、ジェイソンとアイクを振り返り、「いいですか?今日から私は公の場では溝呂木として行動するので、決して『呂布』と呼ばないようにお願いしますね」と念を押した。
「了解、溝呂木ちゃん♪」
アイクは笑顔で答える。
「ああそれからジェイク、変装用のマスクとスマートウォッチを用意しといてください。名前は溝呂木でも、この身体では目立ってしかたないですから……。はぁ……」
「承知いたしました!」
ジェイソンが力強くうなずいた。
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