第11話 最後にセックスした日はいつ?
大きなテーブルの両端に呂布と麗華が向かいあって座る。ジェイソンとアイクはそれぞれ、呂布を挟むように着席した。
呂布は、どかっと威厳たっぷりに足を広げて座っているが、その表情は苦悩に満ちていた。また、大きな椅子に長い足を組んで座った麗華は頬杖をつき、やはり困りきった顔をしている。
ふたりが同時に顔をあげた瞬間、互いの視線がぶつかりあった。
「俺の身体を返せ!」
「それはこちらのセリフです。あなたこそ私の身体を返してください」
麗華はさも不満といった様子で、顔を背けた。ジェイソンとアイクは、状況が飲み込めずに、ぽかんと口を開けている。はっとして、ふたり同時に互いの頬をつねりあい「痛い!」と声をそろえた。
「うそ? これって現実なの? でもそう考えれば納得だわ。ジェイソン、麗ちゃんの隣にもうひとつ椅子を持ってきて」
ようやく状況を理解したアイクはジェイソンに指示を出した。
「ほら、あなたはここに座って」
ジェイソンが運んできた椅子を呂布に勧めるが、呂布はいっこうに動こうとしない。
「問題を解決したいなら、私の言うことを聞きなさい」
そう言われて呂布はしぶしぶ椅子に座った。
「いい? 今からアタシが質問するから、早い者勝ちで答えてくれる?」
アイクはニヤニヤしながら「アタシ、誰が誰だか分かっちゃった」とジェイソンの耳元でささやいた。
「じゃあ、いくわよ? 麗ちゃんの誕生日は?」
「5月18日です」
間髪を入れず、麗華が答える。
「麗ちゃんの好きな色は?」
「白だ」
次は呂布が答えた。麗華は、なぜ分かったのかとけげんそうな顔をする。
アイクも驚いたようにピクリと眉を動かした。
「じゃあ、どんどんいくわよ。麗ちゃんが一番好きなフルーツは?」
「さくらんぼ!」
「赤い木の実だ!」
呂布と麗華が同時に答える。アイクは腕を組み、うーんと唸った。
「こうなったら、もっとディープな質問をするしかないわね」
「ちょ…ちょっと、アイク!」
麗華は慌ててとめる。それにひきかえ呂布は自信たっぷりな顔をしていた。
「最後にセックスしたのはいつ?」
麗華が顔を真っ赤にしながら立ち上がると同時に、椅子が後ろに倒れた。
「アイク!皆の前で変な質問をしないで!」
「本人しか知り得ない大事な情報よ♪それに私たちは恋バナ友達じゃない!今さらそんな恥ずかしがる必要なんてないわよ」
アイクの言葉に、ジェイソンもメガネを押しあげながら頷いている。
「そうです!社長!!!私が本当の社長を知るためにも、この情報は必要です!!」
麗華がジェイソンをキッと睨む。
「そういった類のものは、未経験です!!
「麗ちゃん!!!!」
アイクが呂布の姿をした麗華に駆け寄り、思いきり抱きしめた。
「麗ちゃん、やっぱり純潔で恋愛未経験のあたまカチカチ処女のあんただったのね!どうしてこんなことになっちゃったの?ねぇ、ねぇ!」
「もう!いつもバカにして!私に…恋愛経験ないことを…!」
「もーう!バカになんてしてないわよぉ~。麗ちゃんが王子様を待ち望んでいることも、それまで貞操を貫き通すことも全部メルヘンで素敵だと思ってんのよ、アタシ」
「不純すぎるアイクには、いつかきっと天罰が下ります!」
アイクはおとなしく体を離すと、麗華の手をにぎりじっと目を見る。麗華もアイクの目を見つめ返す。数秒後。
「やな女!」
ふたりだけの合言葉を同時に叫んだ麗華とアイクは、笑いながら再び抱きあった。ひとしきり笑ったあと、麗華は真剣な顔をしてアイクの目をのぞき込んだ。
「アイク…!お願いだから、早く私たちを元に戻して!」
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