第3話 俺(呂布)は女社長に転生してしまったのか!?

 林立する高層ビルの屋上には巨大な看板が所狭しとかかげられ、その間を空飛ぶ車が悠々と飛び去っていく。地上では立体的に張り巡らされた道路を、何台もの自動車が猛スピードで駆け抜けていった。


 中でもとびきり目を引く高級車の車内で、呂布は目を覚ました。


 「んん?」


 なぜか真っ白な太ももと小さな膝が目に入り、違和感を覚える。少し膝を伸ばすとハイヒールを履いたほっそりと美しい足が見えた。


 (俺の……足?)


 今度は両手で胸のもりあがりをつかむ。


 (柔らかい……)


 嫌な予感がして、恐る恐る股間に手を伸ばす。


 「ぬあああああああああ!! ないっ! ないないっ! 俺の息子はどこへ消えた!!」


 「社長、大丈夫ですか?」


 運転中のジェイソンが心配そうに呂布のほうを振り向く。呂布は、こいつは何者だという目でジェイソンを睨みつけた。


 「お、お前は何者だ??ここはどこだ……?」


 だがすぐに、ここは地獄かもしれぬと思い至る。


 「この優男の奇妙な服装……。まさかこれが噂に聞く白無常とかいう死神か?」


 「あの……? 一体なんの話ですか?」


 呂布の態度に戸惑いながらも、ジェイソンは、社長専属の精神科医でもあるアイクの話を思い出していた。確か、最近はストレスが大きく幻覚を見ることもあるから注意が必要だと言っていた。


 (もしかすると幻覚を見ているのかもしれないな……)


 ジェイソンは、小さくため息をついた。


 突然、呂布が身を乗り出し、ジェイソンの首に腕を巻きつけるとグイグイと力を込めて絞め始めた。


 「貴様、さっさと俺の問いに答えろ。これは一体どういうことだ? 今すぐ俺を元の姿に戻さねば、命はないぞ!」


 「社長、何を……。やめてください」


 不意打ちで絞め技をくらったジェイソンは、必死で訴える。しかし呂布は絞めあげた腕の力をさらに強めた。


 「黙れ! 俺に指図するな! 貴様、何を企んでいる? 早く元に戻せ!」


 「グウゥッ……危ないので……まず車を停めさせて……」


 ハンドルのコントロールを失った車は、道路上を大きく蛇行する。接触事故を起こしそうになり周囲の車が怒濤のようにクラクションを鳴らし始めた。


 「うっ……なんの音だ?」


 初めてクラクションの音を聞いた呂布は、思わず両手で耳を塞いだ。窓の外を見ると、車輪のついた色とりどりの大きな鉄の箱が、大きな音を鳴らしながら、飛ぶように走り去っていく。呂布は再びジェイソンの首に腕を回し、絞め上げる。


 「貴様、妖術を使って子鬼どもを呼んだのだな!? そんなことで俺様が肝を冷やすとでも思ったか! こしゃくな!」


 「だ……だんどあだじでずが……(※なんの話ですか……)」


 呂布が片方の眉をあげる。


 「ほう……呪文か? 次はどんな化け物を呼ぶつもりだ? いいか小僧、よく聞け。貴様が死神でも妖術師でもかまわん。度胸があるならかかってこい!」


 怒号のようなクラクションが響く。


 「社長、ま、前を……」


 ジェイソンの顔が引きつっている。呂布が顔をあげると、前方から猛スピードで突進してくる車が見えた。

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