9 奎木狼と百花羞
二千年ほど前に、愛にまつわる悲しい事件が天界で起きた。その時天界の二十八星宿の一人、奎木狼は披香殿で侍女に務めるいる百花羞に恋をした。
しかしこの恋は神々の祝福を得られなかった、二人は天宮の聖域を汚したことを理由に罰を与えられました。百花羞は地獄の業火に焼かれて、白骨と化し、人間界に落とされた、愛する人を忘れられない奎木狼は再び百花羞と縁を結び直すために、天界の使命を捨て勝手に人間界に降り立った。
「あなたへの愛は永遠不滅、何度生まれ変わろうと、あなたを待つ、そして愛し続けます。」奎木狼は百花羞の白骨の上に、《白骨夫人》の4文字を刻んだ、百花羞が人として生まれ変わるまでずっと待つつもりだ。
天界の一日は人間界にとっては一年。奎木狼はあっという間に百花羞の生まれ変わりを見つけることができた、愛の花が再び咲き、お互いはお互いの魂を分かっていた。
だがあんまりにも人の寿命は短い、愛の花は永遠に咲くことができない、奎木狼は一度たりとも百花羞との誓いを忘れたことはない。あまたの年月の中で、奎木狼はずっと人間界に潜伏した。
執念はやがて強烈な妖気となり、神を妖魔に堕ちさせる程に。奎木狼の金色の鎧も黒く染まり、整った容姿も狼に変わり、それから彼は黄色の袍衣を被って、波月洞で自ら王と名乗り、黃袍怪はそうやって生まれた。
百花羞が宝象国の王女として生まれ変わった時まで、西遊のご一行と出会い、奎木狼も孫悟空に捉えられて、最終的に天界の二十七星宿に押収されて、天界まで連れ返された。
愛の執念に影響されたのは奎木狼だけじゃない。業火に焼かれたことに加えて神の力によって《白骨夫人》と刻まれた白骨は最終的に白骨の精と化した。
愛情が忘れられない、神に復讐を誓った妖魔と姿を変えた、だから彼女は三蔵法師に目を付けた、三蔵法師の血肉で妖力を増強し、神の支配を覆し、奎木狼と結ばれるために。
「神が私たちの愛情を祝福しないであれば、その神を打ち倒そう。」白骨夫人は心の中でそう誓った。
そして今日、この愛情深い白骨を救うために、百花羞のために、奎木狼は再び自分の使命を捨て、勝手に人間界に降りた。
「奎木狼、君のこの行為は天界に宣戦布告してると変わりないぞ。」二郎神は奎木狼の不意打ちを避けて、再び第三の目で銀色の光を集めようとした。
「二郎神よ、かつての同僚の情を重んじて、我々に見逃してくれないか?」黄金の鎧を着た奎木狼は敵意を消し、二郎神の前で、彼は許しを請うた。
「笑死!妖魔のために許しを請うなんて、神失格だ。」二郎神は力を抑えつもりはなかった、神が妖魔を討つのは理由なんていらない。
「私はただ百花羞と名前と姿を隠し、ずっと一緒にいたいだけだ……他の神には理解してもらえないけど、でも君なら……分かってくれるはずだ」奎木狼は悲しい顔して、彼の言葉は二郎神の心を動かした。
人と神との間に生まれた半神、二郎神楊戩だけが奎木狼の苦しみをわかってあげられる。
天帝の妹は人間界で楊戩を産んだ後、すぐに天界に連れ戻された、彼の子供時代には母親がいなかった、彼の成長には強くなることを無理やり促す父親だけだ。天界が許さない愛情がどうなるのか、楊戩にはよく分かっている。二郎真君が神として天界に上がった時、彼の母親はとっくり病死し、輪廻転生の輪に帰って行った。
だから楊戩は迷った。
「三眼野郎!彼の言葉に惑わされるな!白骨の精は三蔵法師の肉を食ったことがあるから、彼女を殺さない限り、西遊補円計画が終わらないぞ!」孫悟空には楊戩の痛みを理解できないように、楊戩も孫悟空の痛みを理解することができない。結ばれない愛情の結果について、孫悟空も深く理解している。
斉天大聖は色彩の雲に乗って、如意金箍棒で鴛鴦の契りを引き裂こうとする。
「大聖さん、失礼するぞ!」殺気で溢れかえるの孫悟空、奎木狼もそれに合わせて武器を出して迎え撃つ。
金の刀で金箍棒を止め、昔妖魔に堕ちた奎木狼は追魂刀で孫悟空と五六十回戦を交わしたことがある。
「このクソ野郎!あの時お前を見逃して、二十七宿に頼んで天界に連れ返したのに、ちゃんと神の使命を全うせず、妖魔のために悪に付くとは!」悟空は鋼の棒を振り回し、金の刀と左右にぶつかり合った。
「君には分からないだろ……忘れようとも忘れられない愛は時間によって風化しない、誓いはやがて私を愛する人の元に連れ返いす。」奎木狼は防勢一方となり、今の彼は敵を倒すつもりはない、ただ愛する人を守るために戦うだけだ。
「俺には分からない?じゃあお前には分かるのか、この二千年の間で俺が感じた苦しみがどれ程心の中に刻まれたのか?」悟空の怒りが頂点に達した、彼が二千年以上経験してきた愛は、悪夢のように繰り返された愛だ。
「あなた!」白骨夫人は悟空の妖力が爆発に増えるのを見て、すぐさまに彼女が残っていた全部の力を使って巨大な骨の牢獄を作り出し、悟空を閉じ込めた。
「我が妻よ。」奎木狼は白骨の精の傍まで引いて、愛する人を抱きながら金の風を引き起こし、悟空の前から姿を消した。
この時、ボーとしてた二郎神はようやく正気に戻った、神眼の光を使って悟空を閉じ込んだ骨の牢獄を壊した。
神の鎧が解除され、二郎神はすでに戦意を喪失した。
「逃げられた……なにやってた三眼野郎?敵を前にしてなにボーとしてだ。」焦った悟空は楊戩の胸ぐらを掴んで問い詰めた。
「わるい……」目から光を失った楊戩は珍しく謝った。
「もういい!今一番大事なのはお師さんを守ることだ。」元気のない武将を見て、悟空も怒る気を失った。
悟空も鎧を解除して、未夢の傍に走った、元気がないのは二郎神だけじゃない、唐未夢の目が死んでいる、ブツブツと独り言をずっと言ってる。
「うそ……私の家族……教会にいる人たちはみんな死んだの?」涙目の未夢は悟空の両手を掴み、問いかけた。
悟空は答えられなかった、彼は噓を言いたくない、彼はもすでに一杯の噓に騙されたからだ。
「みんな、私のせいで死んだの?」超現実の事が次から次へと起きたから、未夢はこれ以上現実逃避は出来なかった。
そして未夢は悟空の腕の中で気絶した。奔命に疲れる一日がついに終わり、三蔵法師は覚醒した、新しい西遊補円計画はまだ始まったばかりだ。
…………
二郎神が用意した2階建ての別荘の中で、唐未夢は部屋の中で熟睡している、悟空はすぐそばに待機した。彼から見る未夢は汗が異常に出でいて、だが今彼女が見ている夢までは見れなかった。
覚醒した三蔵法師は、きっと西遊の最後の瞬間の夢を見る事になる、大雷音寺が血に染まった瞬間。
「いやぁ……」知らない顔の人達が一人また一人嚙みちぎれた。
猪八戒、沙悟浄、玉龍。未夢は彼らとの関係が思い出せない。
「早く逃げて……」ただ今日で自分のために血を浴びながら戦う悟空は、二千年も前に彼女に温かい手を差し伸べた。
しかし最後でいくつもの口が彼女を食い散らかした、彼女には見えない、彼女の最後に悟空は何をしてるのか、どうやって耐え続けていたのか。
「彼女の様子はどうだ?」二郎神楊戩はドアにもたれて問いかけた。
「微熱を出している、きっと悪夢を見ているんだろう、いつも覚醒した最初の夜はこうなっている。」悟空は未夢の額の上に濡れたタオルを置いた。
「奎木狼の件はすでに天界に通報した。」楊戩は神の力を使って、未夢の額の上のタオルを少し冷たくした。
「通報してどうなる?まだ二十七宿の人を派遣してあいつを捉えるのか?上のやつらはもう西遊補円計画に関して関心を失っているんだろう。」二千年もの間を経て、天界を西遊補円計画に対しての重視をだんだん薄くなっていく、悟空が得られる支援もどんどんどんどん少くなっていく。
「では白骨の精が逃げ込んだ先について心当たりはあるか?」二郎神はすでに好機を逃してしまったことを知っている。
「あいつが一番隠れるのが上手い、それに奴らの本部はどう探しても見つからない。」三蔵法師を追い求めた妖魔たちはすでに組織としてまとまっている。
「今日の件は私のミスだ。」二郎神は罪悪感を感じた、彼のためらいで二千年間に追い求めたターゲットを見失ってしまった。
「もういい……謝ることなんてお前らしくもない。」だが悟空は知っている、白骨の精はそう簡単に三蔵法師の血肉を諦めたりはしない。
なぜなら白骨の精の愛に対しての執念を孫悟空はよく知っているからだ。愛で持たされる力も孫悟空はよく知っている。神も堕ちるほどの愛の力を。
…………
荒野にいる墓地の中で白骨夫人は死骸から妖力を補充している、奎木狼は心を痛めながら、愛に蝕まれて白骨の妖魔に成り下がった最愛の人を見つめている。
「あなた……今の私を嫌がりますか?今の私はただの醜い妖魔だもの。」白骨夫人は悲しげな涙を流した。
「そんなことはない、君は永遠に私の最愛の妻だ、我が愛しの百花羞よ。」奎木狼は最愛の彼女を抱きしめ、彼の温もりしかこの愛が消えていないことを証明できるなのだ。
「私はもう戻れない……私の未来は……神々を滅ぼした先にあります」百花羞の涙には憎しみが溢れている、神たちによって愛を引き離れた憎しみを。
「それは不可能だ……私たち二人の力じゃ揺るがせない存在なのだ。名と姿を隠し、どこか遠いところに二人で行きましょう。」二千年もの間離れ離れになったので、今の奎木狼ただ百花羞のそばにいたいだけだ。
「それは可能なのよ、私と一緒に本部に行きましょう……あの人は言ってた、あと少しだけで……もう少しの三蔵法師の血肉さえ手に入れば、神々の支配を覆すことができるの!」百花羞が妖魔たちの集団に入った理由は神々の支配を覆し、奎木狼と添い遂げるためだ。
白骨夫人には百花羞の魂を持っていない、だが彼女は百花羞が奎木狼への愛によって生まれた存在だ。
「あの人か……あの人は一体誰なんだ?」奎木狼も大雷音寺で待ち伏せにあった事件を知っていたが、その裏にいる首謀者は誰なのかをまだ知らない。
闇の中に潜む真のボスは白骨の精を待っている、彼女が新しい戦力を闇に連れてくることを。
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