よいパン屋のパン

 日曜日なので張り切ってよいパン屋まで買い物に行く。

 ちいさなねずみがちゅうちゅうと出かけて行っても快くパンを売ってくれる系のよいパン屋さんだが、日本の古き良きパン屋さんと言うよりは、天井がめちゃめちゃ高くそこにいい感じの木の梁がかかっているのが見える、内装だけならヨーロッパの田舎家かな、という雰囲気の良い系パン屋さんでもある。


 出かけていった時間が少し遅かったため、ショーケースの中(そう、ヨーロッパにあるような高い位置のショーケースのパンを声をかけて取ってもらうのだ!)はがらがら。

 お気に入りのよい小麦粉のバゲットは売り切れだったが、バタールはあったので切ってもらう。それからぱりぱりのイギリス食パンを半斤、チーズとくるみの食パンを一斤。パン・ド・ロデヴを半分だけ。

 めずらしく調理パンが残っていたのでパニーニを一つ。みっちりとハムとチーズが入っているやつだ。りんごのガレットがあったので心から悩んだが見送り、代わりにガレット・デ・ロワを買う。今年はフェーヴの代わりにアーモンドが入っているらしく、ちょっと残念。王冠もなし。


 帰ってからパニーニを一瞬だけオーブントースターで温めていただく。温めるならふんわりパンだけ温まる程度にということであったので、そのようにする。

 みっしり潰れたパンがうまく、中のハムからじゅわじゅわに油が滲んでいる。チーズは半溶けが固まった感じで罪の味。

 かと言って全部加熱された感じかと言うと、中のレタスなどはシャキシャキしていたので火の通し具合に何らかの秘密があるのだろう。


 久々に食べたがうまいものだった。ハムもチーズも旨いのだが、それを前提として中に隠れているトマトとりんごが異常にうまい。しょっぱくてもったりとしたうまいもののなかにみずみずしくて酸っぱ甘いものが柔らかいのと硬いの二種類潜んでいるので、一口ごとに慣れるはずの脳が再起動される感じ。


 ここはクリームに頼らないフルーツサンド(フルーツがおかず扱いで、ハムとバルサミコにいちじくがどちゃどちゃに入っているとか、ターキーとマスタードと一緒にみしっと硬い夏みかんとか)を置いてあったりすることもあるので、サンドイッチにも一家言あると思われるのだが、なかなかこう具の組み合わせというやつは玄妙なものよと思う。


 夜食にもサンドイッチを食べることにしたので生ハムと穴の空いたチーズを食料庫から削いで持ち出しておくこと。

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