2#一匹オオカミの秘密の友達

 食い扶持の獲物を仕留めた一匹オオカミのハンスは、茂みの中に入った。


 「今日はこれを喰いながら、俺の友達に愛でようっと!!

 待たせたな!!俺の秘密の友達!!」


 茂みの中の洞穴には、身体が丸くて艶々して、リボンの長い尻尾の付いた『友達』が待っていた。


 「君と出逢ったのは、独り寂しくて荒野に項垂れてトボトボと歩いてた時だ。

 足元にシワシワになって縮んでた君を見付けた時に、それは思えば俺は運命的な出逢いだったかも知れないな。

 俺が息をぷ〜ぷ〜吹き込んで、元気を取り戻したお前には、とても嬉しかったぜ・・・

 なあ、俺の友達よ。」


 その一匹オオカミのハンスの秘密の友達とは・・・


 紫色の結んだ吹き口に赤いリボン状の紐が付いたゴム風船だった。


 一匹オオカミのハンスは、紫色の風船に描かれたオオカミのイラストの鼻にハンスの膨らませたてのゴム風船の様に黒光りした鼻を押し付けて、挨拶をした。


 そして、オオカミの絵の紫色の風船の中に詰め込まれたハンスの吐息を確かめて、ぽーんと前脚の甲でついた。

 

 フワフワと宙を浮かぶ風船は、まるで一匹オオカミのハンスを見て喜んでるように感じた。


 そして、何度も一匹オオカミのハンスは紫色の風船をついたり抱いたりして、紫色の風船・・・ハンスの秘密の友達との愉しいひと時を過ごした。

 


 

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