一匹オオカミの秘密
アほリ
1#一匹オオカミハンス
「ハンスの奴、まだ一匹になってやんの!!」
「あははっ!!しょうがねーんじゃね?だって、あいつリーダー争いに敗れて、群れから追放されたんだしょ!!
無謀だったんだよ!!
この身の程知らずが!!」
「あいつは馬鹿なんだよ!馬鹿!!」
「あーあいつ見てると馬鹿が伝染る!!行きましょ!!
群れから置いてけぼりになったら、あいつみたいになるぞ!!」
「やだなー!!ベロベロバーー!!」
一匹ハイイロオオカミのハンスは、たまたま通りかかったかつての群れの仲間達がからかって来ても無視して、黙々と獲物探して歩き続けた。
一匹オオカミのハンスは、耳を側立てて鼻を当たりの空気をクンカクンカと嗅いでウサギやリス等の気配を探った。
「今に見てろよ、俺を馬鹿にする奴等ども・・・」
思えば、一匹オオカミのハンスは無謀だった。
あの群れの仲間だった頃のハンスの格は、1番下の下のそのまた下であり、何時オオカミ仲間にバカにされ、
そして、酷くいじめられていたのだ。
常に、ハンスは群れの仲間の格好の『ターゲット』だった。
「狩りの練習だ!!」と、ハンスに群れの仲間達に追いかけられ、
噛みつかれ、
どつかれ、
殴られ、
蹴飛ばされ、
仲間にいたぶられるハンスは、常に傷だらけだった。
仲間の糞や尿をかけられて、嘲笑われる事もあった。
・・・ナニクソ・・・!!
・・・俺だって、やる時にはやるんだ・・・!!
・・・ 今に見てろよ・・・!!
と、ある日群れのリーダーオオカミ・・・ハンスへのいじめの主犯格・・・が無防備に寝ている隙をみはからって、下っ端のハンスは襲いかかった。
だが、格も力もリーダーオオカミがハンスより遥か上だった。
忽ち、リーダーオオカミにズタズタに負けた血塗れのハンスは、遂にリーダーオオカミの逆鱗に触れて、群れから追放されたのだ。
そして、一匹オオカミになったハンス。
「一匹オオカミになってせいせいしたぜ・・・
だって俺は、こいつと出逢ったんだ。
忌まわしいあの群れの誰も知らない、秘密のあいつに。」
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