或る夜の思考回路

板谷空炉

或る夜の思考回路

「何のために生きているの?」


 ふと自分に問い掛けることがある。

 強い目標もなく、将来何になっているか分からない。そしてこの情勢もあり、漠然とした不安のみが積み重なる。

 重い雪のように積もり、見えない春までずっと溶けることは無い。


 一応季節は区切りとして過ごしているし、落ち着いてるときに、友人と遊びに行くこともある。

 でも何故だろう、遊んでいるときは楽しかったはずなのに、それの前に「楽しみ」という感情が薄れている。自分が気付いてないだけかもしれないが、幼い頃の遠足前日のようなワクワク感をここ数年持ち合わせていない気がする。

 

 そして気付いた。数年前からということは、この情勢のせいで「楽しみ」という感情が薄れている訳ではないということを。また、漠然とした不安はきっと、こんな情勢でなくても抱えていたに違いない。


 いつから薄れていったのか、始まりは分からない。本当のことも分からない。けれど、こうやってひとは大人になっていくのだろうと考えた。無知であるのは嫌だけど、昔見たいな純粋な気持ちはいつまでも抱えていたいものだなとも思った。


 生きている意味は分からないけれど、心の中に純粋な気持ちを残せばきっと、世界は平和になるのかも知れない。そして、そんな人ほど何事にも真剣に取り組めるのかもしれない。

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或る夜の思考回路 板谷空炉 @Scallops_Itaya

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