第43話 地獄からの魔物討伐

「ディラン様。このあたりから、あの忌み子の気配を感じますか?」


 テラスが地獄の神と、元勇者の転生した世界---テラスの世界---へと降臨する。


「あぁ。テラスも感じているだろうが、このあたりにいると思うのだが……」


 人気のない森の中、周囲を見渡しても、忌み子たちの気配を感じるものの、視認することができない。


「あ! 女神様!」


 そう言って、誰もいないはずの空間から、忌み子が駆け出してきた。



「まぁ! 気配を隠すのがお上手なんですね」


 テラスが驚きながら、駆け寄ってくる忌み子を抱き留め、頭をなでる。


「私たち神々が見つけることができないとは……。上手というレベルではないな」


「人に見つかると、ひどい目に遭わされるんだ。隠れようとしていたら、うまく隠れられるようになってきた。この元神様も僕を守ってくれるから」


 忌み子の後ろから現れたのは、元怠惰の神であった。拘束されているかのように従順だ。


「ちゃんとわきまえているようですね。元怠惰の神」


「あぁ。俺の役割はこの子を守り育てることだ。……このこと一緒にいると、散々な目に遭ったが、おかげで今までの自分の行動を省みることができた。反省している。テラス様、申し訳なかった」


 そう言って地面に跪き、テラスに礼をする元怠惰の神。神という身分が剥奪された元怠惰の神と女神となったテラス。地位が反転したものの、その行為には服従の意が現れている。


「許します。あなたがこの子を守って正しく導いていくのならば」


「ありがとうございます」


 女神テラスの許しを得た元怠惰の神は、この忌み子が寿命を迎えたとき、共に消滅することができるだろう。





「僕のせいで、魔物が現れるようになった言われるんだ。ただ、髪の色が銀色なだけなのに」


「確かに、君の力に影響されて、魔物は活発になっているよ」


「ディラン様!?」


「このことは、この子もこの世界のものも知っておいた方が良い」


 そう言った地獄の神は、忌み子に視線を合わせ、会話する。


「君には、とてつもない力があるんだよ。この世界のものがしっかりと君のような子たちを育てれば、魔物は消滅する。ただ、君のような子供を忌み嫌い、追放すると徐々に世界が衰退する。……それが続けば、この世界の神となったテラスの力にも影響していくだろう」


「え?」


 テラスが驚いている以上に、忌み子の目は大きく開いた。自分を守ってくれた存在。そんなテラスに自分の存在が悪影響を及ぼしてしまったら……。


「僕は、何をしたら良いの?」


 決意を固めた彼は、幼いながら勇者の器であった。










「じゃあ、ディラン様とテラス様が一緒に魔物をやっつけてくれるんだね!?」


「……地獄の神とテラス様がいるなら、もはや随行するだけで終わるんじゃないか?」


 静かにツッコミを入れた元怠惰の神。この旅での彼の役割は、この瞬間明確になったのかもしれない。


地獄から元勇者たちを見に降臨する

with地獄の神

魔物の倒し方を教えて、教え方が悪かったからやり直して教えて、地獄の神とテラスと子供みたいになる

なお、元怠惰の神は神の意向に震えてるたまにツッコミやく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る