第40話 天界での結婚式
「そういえば、テラスたちの結婚式はどうするの?」
「そういう、ミコは?」
お土産を配りのついでに、ミコとテラスはお互いの近況報告をすることとなった。
「私たちは、やらないことにしたわ」
はじめての元神の使い人と神の結婚だし、恋愛の神のファンも多いから、何か起こったらいやだしね、とミコは苦笑を浮かべる。
「で、テラスはどうするの?」
「天界と地獄で二回やってもいいし、地獄だけでもいいし、私に任せてくれるみたいだけど、二回やろうかと思って……でも、ディラン様のファンも多いし、やめておいた方が良いのかな?」
「大丈夫よ! さすがに最高神のいらっしゃる式典になにかするようなお馬鹿は、もう天界にはいないだろうし、上位三柱の神々に防衛されている結婚式なんて、武装した要塞まるごと突っ込んでも騒動を起こせないわよ」
「……そうだよね」
---結婚式当日
「おめでとう、ディランにテラス」
真っ黒の生地に輝く宝石を縫い付けたドレスを身につけたテラスは、地獄の女神と言っても過言ではない美しい服装だ。その横に、同様の衣装を身につけた地獄の神は、地獄の神らしさと同時に、上位の神らしい美しさが神秘的な雰囲気を醸し出している。
そこに現れた最高神が、お礼の言葉を述べる。あまりに荘厳な光景に、周囲の神々も近寄りがたいようだ。
「ありがとうございます、最高神様」
「ありがとう、最高神」
「やっだー! もう泣けてきちゃう……」
「グラ-シス様、ハンカチをどうぞ」
「テラス、ありがとう……」
「グラ-シス、泣くのが早くはないか?」
「あ、ミコ!」
「て、テラス……。おめでとう。最高神も、本日はおめでとうございます」
「あぁ。恋愛の神の子だね。久しいね。ありがとう。弟の結婚式、楽しんで行ってくれ」
「ありがとうございます」
テラスに声をかけられたミコは、崇高な空気の中に呼びつけられ、恐縮した様子を終始浮かべた上に、逃げるように去って行った。慌てて迎えにきた恋愛の神に背中をさすられ、周囲の神々からも同情的な視線を向けられている。
「……ミコに声をかけるタイミングじゃなかったかもしれません」
「まぁ、これだけ高位の神々が集まっているんだ。通常の神々でも消滅しそうな空気だろうね」
「……あとで謝っておきます」
「料理がすっごくうめぇ! 地獄での結婚式も楽しみだな!!」
そんな集団を横目に、料理を貪りついているのは、クロウであった。
天界の結婚式は、壮大に、大人数で執り行われた。
多少の地獄の神のファンの騒動も、誰もが気づく前に抑えられていた。
「とてもきれいだよ、テラス」
「ディラン様もお美しいです」
式中、合間合間に二人でほめ合って照れ合っていたとか。
「ばたばたしていたけど、何か食べるかい?」
「では、残ったお料理を少しいただきます」
「テラスの分は、もちろんとってあるからね。ドレスにつかないように、食べさせてあげよう」
「あ、ありがとうございます」
結婚式が終わった後の控え室では、地獄の神とテラスのそんないちゃつきがあって、他のものが入らず、クロウが呼ばれた。
「ディラン様にテラス! 明日は地獄での結婚式ですよ! さっさと帰る!」
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