第35話 女神誕生

「ミコ、ついたよ」


「ここがテラスたちがおすすめの景色……すごく綺麗ですね!」


 恋愛の神の案内で、テラスたちが想いを確認し合った丘に、ミコは到着した。


「本当だ。でも、僕はこの景色よりもミコのことの方が綺麗だと思うよ」


「……ありがとうございます」


 顔を背けたミコの顔は真っ赤に染まっている。


「ミコは、綺麗だなんて言われ慣れているかと思っていたけど、照れてくれるんだね」


「……憧れの人に言われるのは違いますから」


「かわいいね」


「……そういう……恋愛の神は、慣れていらっしゃいますね」


「……ミコ?」


「……アモル様」


「よくできたね」


「ずるいです」


「なにが?」


「……アモル様ばかり、私を振り回します」


「そんなことないよ、ミコ。ほら」


 ミコの手をそっと取った恋愛の神は、自分の胸元に手を持って行く。


「僕がドキドキしているのが、わかるだろう?」


「アモル様……」


「美しい外見をしているのに、テラスのことをいつも守っている勇敢なところ。ぽろっと現れるか弱さや愛らしさ。ミコのそんなところに僕は夢中なんだよ」


「……飽きてしまいませんか?」


「こんなに素敵な女性、飽きるわけがないよ」


「アモル様……」








「なーんか、あたしがディランに案内したスポット、恋愛成就の名所になりそうなんだけど……。恋愛の神のお墨付きなら、仕方ないわよね? あたしも恋したーい!!」









---

「ごめん、テラスよりも先に女神になっちゃった」


「恋愛の神もミコも幸せそうで、私も嬉しいからいいと思う! 恋愛の神、最高神に認めてもらうためにすごく頑張ったんだってね。ミコ、愛されているね」


「……ありがとう、テラス」


「ところで、何の神なの?」


「……縁結びの女神」


「司るものにまで、恋愛の神のミコへの執着を感じるよ」


「自身の領域を分け与えるのが、一番容易だろうしね」


 そう言った地獄の神は、さらっと続け、テラスが赤面するのだった。


「テラスが女神になるとき、前例があると最高神に頼みやすいな。ありがとう」


「どういたしまして。って言えばいいんでしょうか? 地獄の神」


「ミコまでやめてー!」


 テラスの叫び声が響き、思わず皆が吹き出したのだった。

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