第47話 遠ざかる救助船

 砂浜の椰子の木陰に隠れ、原住民の見張りが米軍に無線機で連絡を取っている。


 「A Japanese destroyer is approaching east coast !(日本の駆逐艦が東海岸に近付いて来る)」


米軍の応答が無い。

ヘンダーソン基地内の米軍キャンプでは通信兵が無線を受信して急いで上官に伝えに行く。


 通信兵「A Japanese destroyer is approaching east coast !(日本の駆逐艦が東海岸に接近しているそうです)」

 上官「How many ships are seen from there ?(何隻だ)」

 通信兵「One boat sir. They have come to help the soldiers who stayed.(一隻です。日本兵を救助に来ている様です)」 

 上官「Rescue?・・・ I'm made the thing which wasn't heard . Stop departure and arrival of an airplane.(救助ッ? ・・・すべての航空機に伝えろ。駆逐艦が居なくなるまで待機するように)」

 通信兵「Stand by ?・・・Yes sir !(待機?・・・分かりました。待機させます)」


残兵回収を確認に廻る一隻の警戒駆逐艦。

拡声器からは艦長の涙の声が。


 艦長『皆、よく戦った。戻ったらこの武運は必ず上申する。これで、この艦は島から離れる。三日後に必ずもう一度エスペランサ岬に来る。ガダルカナルの英霊を讃える・・・』


艦上の沢山の残兵達と水兵達が不動の姿勢でガ島に向かって『挙手の敬礼』をする。

総ての艦上の兵が「号泣」している。


三上が砂浜に向かって有りっ丈の声で叫ぶ。


 三上「お~い、死ぬんでないぞ~・・・迎えに来るからな~~~・・・」


全速力で帰路につく駆逐艦。

遠ざかる駆逐艦。


 静まり返った幽鬼兵の島『餓島』

数百の傷病兵が残された敗残島『餓島(ガダルカナル)』


 未(イマ)だにソロモン諸島(ガダルカナル)を通過する日本の船は、夜間の砂浜に沢山の故日本兵の『魂(ヒトダマ)』を見ると言う。


※七度(ナナタビ)人として生まれ変わり、朝敵を誅(コロ)して国(天皇)に報(ムク)いん。(七生報国)

                     おわり


 「戦後78年 未だ還らぬ英霊達に」

 「南無妙法蓮華経 南無妙法蓮華経」


   日本第二国歌「海行かば」

 海行かば ( If I go away to the sea, )

 水浮く屍 (I shall be a corpse washed up, )

 山行かば (If I go away to the mountain, )

 草生す屍 (I shall be a corpse in the grass,)

 大君の辺にこそ死なめ (But if I die for the Emperor, )

 かえりみはせじ (It will not be a regret. )

     大伴家持(万葉集)


この作品をソロモン諸島に散った数万の英霊達に捧ぐ。


尚、『ガダルカナル戦線』で生き残った兵士達は「転進」と称し、この直後、『東部ニューギニア戦線』に投入される。

 生還者は数少なく、戦後80年経った今、これ等の島で兵士達が如何に戦い、生き残ったかを語る者は少ない。


 この作品は、2014年(平成26年)の執筆になります。最終編集日 2023年(令05年08月13日)


 この作品は、著作権を放棄したものではありません。

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忠霊塔(転 進) 具流次郎 @honkakubow

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